親亡き後に生活が崩れるのはなぜか

― グループホーム移行で不安定になる5つの構造要因 ―

「親が亡くなったあと、急に不安定になった」

これは珍しい話ではありません。

ですが私はこう考えています。

亡くなったから崩れたのではない。
“構造”が露呈しただけです。

まず前提を整理する

長年同居している家庭では、
生活は暗黙の分業で回っています。

しかしその分業は、ほとんど言語化されていません。

親が担っている役割は、実は5つに分解できます。

① 金銭管理機能

・年金の管理
・公共料金の支払い
・医療費の調整
・貯蓄管理
・突発支出への対応

本人が「自分でやっている」と思っていても、
実務は親が担っていることが多い。

親亡き後、ここが最初に崩れます。

② 外部交渉機能

・病院とのやりとり
・役所手続き
・支援機関との調整
・近隣トラブル対応

これは見えにくいですが、
非常に大きい。

グループホームに移行すると、
支援者が入ります。

しかし、支援者は“家族の代替”ではありません。

役割の質が違います。

③ 情緒安定機能

これは制度には載らない部分です。

・愚痴を受け止める
・感情の爆発を吸収する
・不安をなだめる
・衝動を止める

親は感情のダンパー(緩衝材)になっています。

この機能が突然消えると、

・怒り
・不安
・被害的思考
・依存先の転換

が起こりやすい。

④ 生活リズム調整機能

・起床確認
・服薬確認
・通院同行
・食事の準備

グループホームでは一定のルールがあります。

しかし「やらされ感」が強まると、

内発的な生活管理能力は育ちません。

親と暮らしていた時の
“甘えの中の安定”とは質が違います。

⑤ 意思決定代行機能

これが最も重要です。

本人は「自分で決めている」と感じていても、

  • 選択肢を提示していたのは誰か
  • 現実的な線に修正していたのは誰か
  • 最終判断を背負っていたのは誰か

多くの場合、親です。

この機能が失われたとき、

本人は急に「自由」になります。

しかし準備のない自由は、混乱を生みます。

グループホーム移行が不安定になる理由

多くの家庭はこう考えます。

「グループホームに入れば安心」

しかし実際は、

✔ 金銭管理の精度
✔ 対人距離の適応力
✔ 共同生活ストレス耐性
✔ 支援者との関係構築力

これらが整っていないと、

再不安定化します。

これは珍しくありません。

問題は“制度”ではない

制度は整っています。

グループホームもあります。

相談支援もあります。

しかし、

構造の棚卸しをしないまま移行すると、
必ずどこかが崩れる。

親が元気なうちにやるべき専門的準備

抽象論ではありません。

具体的には次の作業です。

① 親が担っている役割を5分類で書き出す
② 本人が単独でできる割合を数値化する(%で)
③ 外部に委ねられる機能を整理する
④ 移行後の支援密度を想定する
⑤ 3か月間のシミュレーションをする

ここまでやって初めて、
移行は“準備された自立”になります。

消極的一人は、準備不足で起こる

親亡き後に起こる混乱は、

突然の出来事ではありません。

準備不足が顕在化しただけです。

厳しいことを言います

「その時になったら考える」

これは最もリスクが高い。

なぜなら、

親が亡くなった直後は
冷静な判断ができないからです。

感情の嵐の中で
住まい・お金・役割を決める。

これは構造的に無理があります。

生活設計とは何か

生活設計とは、

未来をコントロールすることではありません。

崩れにくくすることです。

支援は万能ではありません。

制度も万能ではありません。

構造が整っていなければ、
どこかで歪みが出ます。

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