ただ転んだ、では終わらない

現場で見てきたこと

―顔のけがが教えてくれる身体の変化―

「ちょっと転んだだけなんです」

ご家族からよく聞く言葉です。

年齢を重ねれば転倒は珍しいことではありません。
実際、多くの方が「年だから仕方ない」と受け止めています。

ですが、現場で私は転倒そのものよりも
どこをけがしたのか を見ています。

そこに、身体の変化が隠れていることがあるからです。


人は本来、顔からは転ばない

神経学的に大きな問題がなければ、人は転びそうになった瞬間に無意識の反応を起こします。

  • 手を前に出す
  • 身体をひねる
  • 横へ逃がす

これは意識して行う動作ではなく、身体を守るための反射的な反応です。

そのため通常は、

などに傷ができることが多く、顔面を強く打つことは多くありません。


顔に傷がある転倒が示すサイン

ところが時々、

  • 額や鼻の打撲
  • 目の周囲の内出血
  • 顔の正面だけのけが

といった転倒を経験する方がいます。

この場合、「不注意だった」で終わらない可能性があります。

本来出るはずの 防御反応が間に合っていない 状態が考えられるからです。


なぜ手が出なくなるのか

加齢に伴い、脳では少しずつ変化が起こります。

  • 反応速度の低下
  • 姿勢を立て直す機能の低下
  • 判断と運動の連携の遅れ

こうした変化が進むと、転倒そのものよりも

転倒を止める動きが間に合わなくなる

という現象が起きます。

つまり、

「転んだ」のではなく
「転倒を修正できなかった」状態です。


家族が気づきにくい理由

多くの場合、ご家族はこう考えます。

  • 足腰が弱った
  • たまたまバランスを崩した
  • 運が悪かった

どれも間違いではありません。

しかし現場では、

転び方が変わったこと自体 を重要な変化として捉えます。

生活の中では小さな出来事でも、身体からのサインであることがあるのです。


不安になる必要はありません

これは恐怖をあおる話ではありません。

ただ、

「顔を打つ転倒があった」

という事実は、一度立ち止まって考えるきっかけになります。

  • 最近反応が遅くなっていないか
  • 歩き方が変わっていないか
  • 物につまずく回数が増えていないか

もし気になる変化が重なっているなら、早めに相談することで生活を守れる場合があります。


生活の中に現れる小さなサイン

身体の変化は、病院より先に生活の中に現れます。

転倒もそのひとつです。

「ただ転んだだけ」

そう見える出来事の中に、次の支援につながるヒントが隠れていることがあります。

気づいた人が、少しだけ立ち止まって考える。
それだけでも未来は変わることがあります。

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