はじめに
「親亡き後問題について相談したいのですが、何から考えればいいでしょうか。」
障害のあるお子さんを持つ親御さんから、この相談を受けることがあります。
多くの方は、
- 相続
- 遺言
- 成年後見制度
から考え始めます。
もちろん、どれも大切です。
しかし、私は最初にそこは見ません。
なぜなら、親が亡くなった翌日から始まるのは相続ではなく生活だからです。
朝起きる。
食事をする。
仕事へ行く。
薬を飲む。
困ったときに相談する。
生活が続かなければ、どれだけ財産があっても安心して暮らすことはできません。
今回は、私が親亡き後の相談を受けたとき、実際に確認している10項目をご紹介します。
① 毎月の生活費を把握していますか?
「1,000万円残せば安心でしょうか。」
この質問は本当によく受けます。
私の答えは、
「まず一か月の家計を見せてください。」
です。
障害年金がある人。
障害者雇用で働いている人。
グループホームで生活している人。
一人暮らしをしている人。
同じ1000万円でも、必要なお金はまったく違います。
私は最初に、
収入
支出
不足額
を書き出します。
親亡き後問題は、相続の問題ではなく家計の問題でもあるからです。
② 本人はお金を管理できますか?
ここで見るのは預金額ではありません。
生活の中でお金を扱えるかです。
例えば、
・ATMでお金を下ろせる
・お釣りを確認できる
・毎月の支払いを理解している
・ネット通販で高額商品を買わない
・詐欺を疑える
こうした力があれば、自立できる可能性は大きく広がります。
逆に、ここが苦手なら、お金を残すだけでは解決しません。
③ 困ったときに相談できる人はいますか?
私は、この項目をとても重視しています。
親御さんが元気なうちは、何かあれば親に相談できます。
では親が亡くなったら。
相談支援専門員。
グループホーム。
職場。
兄弟姉妹。
誰でも構いません。
「この人に電話すれば大丈夫」
という人が一人いるだけで、生活は大きく変わります。
④ 働く場所は10年後もありますか?
就職した。
それだけでは安心できません。
私は、
- 仕事内容
- 通勤方法
- 人間関係
- 体調
- 相談体制
まで確認します。
親亡き後問題は、働き続けられるかという問題でもあります。
⑤ 住まいは本当に安心ですか?
実家で暮らしている方は多くいます。
しかし、親が亡くなったあとも住み続けられるでしょうか。
固定資産税。
修繕。
近所付き合い。
冬の除雪。
一人暮らし。
「家がある」と「暮らせる」は違います。
私は住まいを不動産としてではなく、
生活の基盤
として考えています。
⑥ 障害年金だけで生活できますか?
障害年金は生活を支える大切な制度です。
しかし、生活をすべて支える制度ではありません。
年金。
給与。
各種手当。
家賃。
これらを組み合わせて初めて生活が成り立ちます。
私は必ず家計シミュレーションを作ります。
⑦ 兄弟姉妹と話していますか?
親御さんは
「負担をかけたくない」
と言います。
その気持ちはよく分かります。
しかし、何も伝えないまま親が亡くなる方が、兄弟姉妹は困ります。
介護を頼む話ではありません。
現状を共有するだけでも違います。
⑧ 契約を理解できますか?
携帯電話。
アパート。
施設。
保険。
世の中は契約だらけです。
契約内容を理解する力が十分か。
もし難しいなら、成年後見制度や日常生活自立支援事業なども選択肢になります。
⑨ 緊急時の準備はできていますか?
親が急に入院した。
夜中に体調が悪くなった。
災害が起きた。
そんなとき、誰へ連絡するか決まっていますか。
意外ですが、ここが決まっていない家庭は少なくありません。
⑩ 「親が明日いなくなる」と考えたことがありますか?
少し厳しい質問かもしれません。
しかし私は、親亡き後問題は、親が亡くなってから考える問題ではない
と思っています。
親が元気だからこそ、
一緒に練習できます。
一緒に失敗できます。
一緒に考えられます。
これが一番大きな財産です。
福祉特化FPとして伝えたいこと
親亡き後問題というと、相続や成年後見制度ばかりが注目されます。
しかし現場で見ていると、本当に生活を支えているのは、お金だけではありません。
住まい。
働く場所。
相談できる人。
地域とのつながり。
生活する力。
これらが組み合わさって、
初めて安心して暮らし続けることができます。
私は、親亡き後問題とは、
「財産を残すこと」ではなく、「暮らしを引き継ぐこと」
だと考えています。
まとめ
親亡き後問題には、一つの正解はありません。
しかし、今日ご紹介した10項目を一つずつ確認していくことで、
将来の不安を具体的な準備へ変えることができます。
親が元気な今だからこそできることがあります。
「まだ早い」ではなく、
**「今だからできる準備」**を少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

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