はじめに
「親が亡くなったら、妹に面倒を見てもらうしかないのでしょうか。」
障害のあるお子さんを持つ親御さんから、何度も受けてきた相談です。
親亡き後問題を考えるとき、多くの方が心配するのは本人だけではありません。
「きょうだいに負担をかけたくない。」
この思いを抱えている親御さんは少なくありません。
では実際に、兄弟姉妹には障害のある兄弟姉妹の生活を支える義務があるのでしょうか。
今回は法律だけではなく、現場で感じてきた現実も含めて考えてみます。
法律上、兄弟姉妹に扶養義務はあるのか
民法では、兄弟姉妹にも扶養義務が定められています。
しかし、親子間の扶養義務とは性質が異なります。
親子は「生活保持義務」とされ、自分と同程度の生活を維持できるよう扶養する責任が強く求められます。
一方、兄弟姉妹は「生活扶助義務」と考えられ、生活に余裕がある場合に助け合うという位置づけです。
つまり、
「兄弟だから一生面倒を見なければならない」
という法律ではありません。
では現実はどうなのか
法律と現実は違います。
親御さんが亡くなったあと、
実際には兄弟姉妹が相談を受けることは少なくありません。
例えば、
- 入院の手続き
- 緊急時の連絡
- 行政とのやり取り
- 相続の手続き
などです。
ただし、
これは「介護をすべて担う」という意味ではありません。
地域には、
相談支援専門員、
グループホーム、
訪問支援、
成年後見制度など、
本人の生活を支える仕組みがあります。
兄弟姉妹だけで抱え込む時代ではないのです。
親が元気なうちに準備できること
私は親御さんに、
「兄弟にお願いすること」よりも、
「兄弟が困らない仕組みを作ること」
を考えてほしいと思っています。
例えば、
- 相談支援専門員を決めておく
- かかりつけ医を共有する
- 通帳や保険の情報を整理する
- 障害年金や各種制度を確認する
- 将来の住まいを考えておく
こうした準備があるだけで、親亡き後の負担は大きく変わります。
財産より大切なもの
「少しでも多くお金を残せば安心でしょうか。」
そう聞かれることがあります。
もちろん、お金は大切です。
しかし、現場で見ていると、
生活が安定している人には共通点があります。
それは、
- 働く場所がある
- 信頼できる支援者がいる
- 住まいが決まっている
- 困ったときに相談できる
という環境が整っていることです。
反対に、お金だけがあっても孤立してしまえば、安心して暮らし続けることは難しくなります。
兄弟姉妹と話し合うタイミング
親亡き後の話は、つい後回しになりがちです。
「まだ早い。」
「本人がかわいそう。」
そう感じる気持ちもよく分かります。
しかし、本当に困るのは、
親が急に入院したときや亡くなったときです。
そのとき初めて兄弟姉妹が状況を知るのでは遅い場合があります。
親が元気なうちに、
本人も交えて、
将来について少しずつ話し合っておくことが大切です。
福祉特化FPの視点
私は親亡き後問題を、
「兄弟に引き継ぐ問題」
とは考えていません。
本当に目指すべきなのは、
兄弟姉妹が介護者になることではなく、
本人が地域の中で安心して暮らし続けられる仕組みを作ることです。
そのためには、
お金だけでも、
法律だけでも、
福祉制度だけでも足りません。
住まい、就労、福祉サービス、人とのつながり。
それらを親が元気なうちから少しずつ整えていくことが、親亡き後の安心につながると私は考えています。
まとめ
兄弟姉妹には一定の扶養義務があります。
しかし、それは「すべてを背負う義務」ではありません。
親亡き後問題を解決する方法は、
兄弟に負担を任せることではなく、
本人が地域で暮らし続けられる環境を整えることです。
親が元気な今だからこそできる準備があります。
将来の安心は、一つの制度や一つの財産ではなく、小さな準備の積み重ねによって作られていきます。

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