はじめに
親の介護が終わると、多くの方がこう思います。
「やっと終わった。」
長い介護生活。
仕事との両立。
病院への付き添い。
施設探し。
夜中の呼び出し。
心も身体も限界まで頑張ってきた家族にとって、その言葉は決して大げさではありません。
しかし、私は作業療法士として、そしてファイナンシャル・プランナーとして、多くのご家族と関わる中で、別の現実を見てきました。
介護は終わっても、家族の仕事は終わらない。
むしろ、新しい問題がそこから始まることも少なくありません。
介護が終わると、心も終わるとは限りません
介護が終わった後、ご家族の中には体調を崩す方が少なくありません。
気が抜けたようになり、何も手につかなくなる。
食欲がなくなる。
眠れなくなる。
うつ状態になる。
これまで介護だけを考えて生きてきた生活が突然終わることで、大きな喪失感や燃え尽き症候群のような状態になることがあります。
周囲は「介護が終わって良かったね」と声を掛けます。
でも本人は、安心よりも「これから何をすればいいのだろう」と戸惑っていることも多いのです。
相続は「お金持ち」の問題ではありません
介護が終わると、次に待っているのがお金や手続きの問題です。
相続というと、
「うちは財産なんてないから関係ない。」
そう思われる方もいます。
しかし実際には、
預貯金。
年金。
生命保険。
自宅。
車。
少しでも財産があれば相続は始まります。
そして問題になるのは、お金の多さではありません。
準備をしていたかどうか。
ここが大きな分かれ道になります。
「家は売ればいい」は、本当にそうでしょうか
私が関わったご家族で、東京に住む娘さんたちがいました。
「実家は売ればいいですよね。」
そう話していました。
確かに、東京であればその感覚も分かります。
しかし、その家は地方都市にありました。
私は、その地域の不動産市場を知っています。
思うような価格では売れないかもしれない。
そもそも、すぐに買い手が見つからないかもしれない。
家は財産になることもあります。
一方で、管理費や固定資産税だけがかかる「負担」になることもあります。
令和5年住宅・土地統計調査では、日本の空き家は約900万戸となり、過去最多を更新しました。
親が亡くなった後、「住む人がいない家」をどうするかは、多くの家庭が直面する課題です。
葬儀が終わっても、お金はかかります
亡くなった後のお金というと、葬儀費用を思い浮かべる方が多いでしょう。
もちろん、それも大きな支出です。
しかし、実際にはその後も様々な費用が発生します。
家財の整理。
遺品処分。
実家の管理。
名義変更。
場合によっては墓じまいや仏壇の整理。
遠方に住んでいれば、何度も実家へ通う交通費や宿泊費も必要になります。
「こんなにお金がかかるとは思わなかった。」
そう話されるご家族は決して少なくありません。
家族でもめるのは、お金だけではありません
相続というと、財産の取り合いをイメージする方もいます。
もちろん、そのようなケースもあります。
しかし現実には、
「誰が介護をしてきたのか。」
「実家を誰が片付けるのか。」
「墓はどうするのか。」
「仏壇は誰が引き継ぐのか。」
こうした役割の問題で話し合いが難しくなることも少なくありません。
介護をしていた家族ほど、
「やっと終わった。」
ではなく、
「まだ終われない。」
という気持ちになることがあります。
私が一番伝えたいこと
FPとして相談を受けるとき、私は財産の金額より先に聞くことがあります。
親は何を望んでいるのか。
家はどうする予定なのか。
兄弟姉妹で話し合えているのか。
誰が何を担当するのか。
これらは、お金では解決できません。
だからこそ、親が元気なうちに話し合ってほしいのです。
介護の準備は、多くの人が考えます。
でも、
介護が終わった後の準備まで考えている家庭は決して多くありません。
まとめ
介護が終わることは、一つの区切りです。
しかし、それは家族の役割が終わることではありません。
相続。
空き家。
家財整理。
仏壇。
お墓。
名義変更。
そして、家族の心の整理。
そのどれもが、「介護のその後」に待っています。
だから私は、介護が始まったときから、その先の暮らしまで考えておくことをおすすめしています。
本当に必要なのは、介護の準備だけではありません。
介護が終わった後の人生を準備することなのです。
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福祉住環境研究所では、作業療法士・ファイナンシャル・プランナー(FP)・宅地建物取引士という複数の専門資格と、就労継続支援B型事業所の運営経験を活かし、「住まい・介護・障害・お金」を横断した講演・研修を行っています。
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