はじめに
親が亡くなった後、実家を相続する。
これは多くの家庭で起こる問題です。
しかし、相続した家をどうするかは簡単ではありません。
売るのか。
貸すのか。
残すのか。
解体するのか。
そして、障害のある家族や介護が必要な家族がいる場合、その家は単なる不動産ではありません。
将来の住まいになる可能性もあります。
この記事では、相続した空き家について、福祉特化FPの視点から考えていきます。
空き家は増え続けている
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%となり、いずれも過去最高となりました。
つまり、日本の住宅のおよそ7戸に1戸が空き家という状況です。
空き家は、もはや一部の地域だけの問題ではありません。
親の介護、施設入所、相続、人口減少が重なり、どの家庭にも起こり得る問題になっています。
相続登記は義務化された
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を行う必要があります。
正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
以前のように、
「とりあえず名義は親のままでいい」
という放置は、今後ますます難しくなります。
相続した家をどうするかは、早めに考える必要があります。
相続した空き家でまず考えること
空き家を相続した時、多くの人はすぐに
「売れるか」
を考えます。
もちろん売却は重要な選択肢です。
しかし、福祉特化FPとしては、その前に考えたいことがあります。
それは、
この家は資産なのか。
それとも生活資源なのか。
という視点です。
「資産」として見る場合
資産として見るなら、主な選択肢は3つです。
① 売る
最も分かりやすい選択肢です。
売却できれば現金化できます。
固定資産税や管理費の負担もなくなります。
ただし、地方ではすぐに買い手が見つからないこともあります。
建物が古い場合、解体費用が必要になることもあります。
② 貸す
賃貸に出せれば、毎月の収入になります。
例えば月5万円で貸せれば、年間60万円です。
ただし、修繕費、空室リスク、管理の手間があります。
築年数が古い住宅では、貸す前に数十万円から数百万円の修繕が必要になることもあります。
③ 残す
将来使う可能性があるなら、残す選択もあります。
ただし、使わない家を残すには管理コストがかかります。
固定資産税、火災保険、草刈り、雪国であれば除雪や凍結対策も必要です。
「いつか使うかもしれない」は、最も判断を先送りしやすい言葉です。
「生活資源」として見る場合
一方で、空き家は単なる資産ではありません。
障害のある子どもの将来の住まい。
親亡き後の生活拠点。
兄弟姉妹が一時的に支援に入る場所。
地域で暮らし続けるための拠点。
こうした可能性もあります。
だからこそ、すぐに売るのではなく、
「この家は誰かの生活を支えられる家なのか」
を確認する必要があります。
住める家かどうかを確認する
作業療法士の視点では、家は「ある」だけでは足りません。
住める家かどうかが重要です。
確認したいのは、例えば以下です。
- 玄関の段差
- 階段の有無
- トイレの広さ
- 浴室のまたぎ高さ
- 寝室とトイレの距離
- 冬場の暖房
- 買い物や通院のしやすさ
特に高齢者や障害のある方が住む場合、古い住宅はそのままでは生活しにくいことがあります。
家を残すなら、リフォーム費用も含めて考える必要があります。
お金の比較をしてみる
例えば、相続した実家について次のようなケースを考えます。
築40年。
売却価格は600万円。
貸すにはリフォームに250万円必要。
貸した場合の家賃は月5万円。
この場合、単純計算では、
リフォーム費用250万円 ÷ 家賃5万円 = 50か月
つまり、約4年2か月でリフォーム費用を回収する計算になります。
ただし、実際には空室、修繕、管理費、税金があります。
そのため、単純に「貸せば得」とは言えません。
FPとしては、
売却した場合の現金。
貸した場合の収入。
残した場合の維持費。
この3つを数字で比較する必要があります。
放置が一番危ない
空き家で最も避けたいのは、判断を先送りして放置することです。
放置された家は、
- 老朽化
- 雨漏り
- 雪害
- 近隣トラブル
- 防犯上の問題
- 資産価値の低下
につながります。
さらに、相続人が複数いる場合、時間が経つほど話し合いが難しくなります。
親の家は、思い出があるからこそ判断しづらいものです。
しかし、放置すればするほど選択肢は減っていきます。
福祉特化FPの視点
空き家問題は、不動産だけの問題ではありません。
親の介護。
施設入所。
相続。
障害のある子どもの将来。
兄弟姉妹の負担。
地域での暮らし。
これらが重なって起こる生活の問題です。
だから私は、空き家を考える時、
「売れるかどうか」
だけではなく、
「その家が家族の生活にどんな役割を持てるか」
を考える必要があると思っています。
売ることが正解の家もあります。
貸すことが正解の家もあります。
残すことが正解の家もあります。
大切なのは、感情だけでも、損得だけでも決めないことです。
生活とお金の両方から判断することです。
まとめ
相続した空き家は、早めに方針を決めることが大切です。
売る。
貸す。
残す。
解体する。
どれが正解かは家庭によって違います。
ただし、共通して言えることがあります。
空き家は放置すると、資産ではなく負担になっていきます。
相続した家をどうするかは、不動産の問題であると同時に、家族のこれからの生活設計の問題です。
親が元気なうちから、または相続が発生した早い段階で、家族で話し合っておくことが重要です。


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