はじめに
「親の介護が必要になったので仕事を辞めようと思っています。」
作業療法士として働いていた頃から、そして現在も、このような相談を受けることがあります。
介護離職は、家族を大切に思うからこそ選びたくなる決断です。
しかし、一度仕事を辞めると、失うものは給与だけではありません。
年金、退職金、キャリア、社会とのつながりなど、多くのものに影響します。
この記事では、介護離職を防ぐために知っておきたい制度やお金、そして現場で感じてきたことをお伝えします。
介護離職は決して珍しいことではない
総務省の就業構造基本調査では、家族の介護・看護を理由に離職する人は毎年数万人規模で発生しています。
また、介護をしながら働いている人は300万人を超えるとされており、高齢化が進む日本では誰にとっても身近な問題になっています。
40代、50代は仕事で責任が増える一方、親の介護が始まりやすい年代でもあります。
まさに「仕事」と「介護」が重なる世代です。
仕事を辞めると失うもの
介護離職で失うのは毎月の給料だけではありません。
例えば年収450万円の方が50歳で離職した場合、
- 給与収入
- 賞与
- 厚生年金への加入期間
- 退職金
- 昇給の機会
まで失う可能性があります。
再就職できても、以前と同じ条件に戻ることは簡単ではありません。
FPの視点では、「介護費用」だけではなく「失われる収入」も必ず計算する必要があります。
介護保険サービスを使っていますか
介護を家族だけで抱え込む必要はありません。
介護保険では、
- 訪問介護
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具貸与
- 住宅改修
など、多くのサービスを利用できます。
介護保険の自己負担は、所得に応じて原則1~3割です。
サービスを適切に利用することで、介護者の負担を大きく減らせる場合があります。
住宅改修で介護時間が減ることもある
介護は「人手」だけで解決するものではないということです。
例えば、
- 手すりの設置
- 段差解消
- 滑りにくい床材
- トイレ改修
によって、介助時間が短くなることがあります。
介護保険には住宅改修費(支給限度基準額20万円)の制度があり、対象工事であれば費用負担を軽減できます。
環境を整えることは、介護者を守ることにもつながります。
介護休業制度という選択肢
仕事を辞める前に確認したい制度の一つが介護休業制度です。
対象家族1人につき通算93日まで取得でき、一定の条件を満たせば介護休業給付金も支給されます。
「辞める」か「続ける」かの二択ではありません。
制度を利用しながら今後の生活を考える時間を確保することもできます。
FPとして考える介護離職
介護離職を考えるとき、
介護費用だけを見てはいけません。
例えば、
介護サービスを月3万円利用したとしても、
仕事を辞めて毎月30万円の収入を失えば、家計全体への影響ははるかに大きくなります。
一見すると介護サービスは「お金がかかる」と感じるかもしれません。
しかし、
収入を維持できるなら、結果的に家計を守ることにつながる場合も少なくありません。
私が現場で見てきたこと
介護が始まると、
「自分がやらなければ」
という思いから、一人で抱え込んでしまう家族がいます。
一方で、
地域包括支援センターやケアマネジャーに早めに相談し、
介護保険サービスや住宅改修を活用した家族は、仕事を続けながら介護を両立しているケースも多く見てきました。
介護は家族だけで支える時代ではありません。
地域の支援を上手に利用することも、大切な介護です。
まとめ
介護離職は人生を左右する大きな決断です。
だからこそ、
仕事を辞める前に、
- 介護保険サービス
- 介護休業制度
- 住宅改修
- 福祉用具
- 地域包括支援センターへの相談
など、利用できる制度を確認してください。
介護と仕事は、どちらかを諦めるものではありません。
支援制度を活用しながら両立できる方法を探すことが、本人にも家族にもより良い選択につながることがあります。


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