病気になると、身体が不自由になることは多くの方が想像できます。
しかし、実際に現場で多くの方と関わっていると、身体以上に大きく変わってしまうものがあります。
それは、夫婦の関係です。
以前担当していたパーキンソン病の女性も、その一人でした。
個人が特定されないよう、年齢や職業など一部の内容は変更しています。
病気になる前は、誰もが羨むようなご夫婦でした
ご主人は地域で事業を成功させた経営者でした。
生活に困ることはなく、周囲から見れば何不自由ない暮らしを送っていました。
奥様も若い頃は華やかな方だったと聞いています。
長年連れ添い、子どもも独立し、経済的な不安もない。
多くの人が理想の老後を想像するようなご夫婦でした。
病気は、少しずつ夫婦の距離を変えていきました
パーキンソン病は、ある日突然すべてが変わる病気ではありません。
動作が遅くなる。
転びやすくなる。
表情が乏しくなる。
できていたことが、少しずつできなくなります。
その変化を一番近くで見続けるのは、家族です。
ご主人も最初から冷たかったわけではありません。
しかし、病気が進むにつれて、以前の奥様との違いを受け入れることが難しくなっていったように感じました。
「家に帰りたくありません」
リハビリの帰り際、その方が涙を流すことが何度もありました。
「家に帰りたくありません。」
そう話されたこともあります。
理由を聞くと、ご主人との関係がうまくいかなくなっていました。
病気が進んだことで、ご主人が奥様に厳しく接する場面が増えていたのです。
介護の負担があったことも事実でしょう。
戸惑いや、将来への不安もあったと思います。
だからといって、誰か一人を責めることはできません。
病気は本人だけでなく、家族の心も少しずつ変えてしまうことがあるからです。
家族がいても、孤独になることがあります
子どもたちは親を心配していました。
しかし、それぞれに家庭や仕事があります。
頻繁に帰ってくることはできません。
家族がいることと、毎日支えてくれる人がいることは、同じではありません。
リハビリの時間だけが、その方にとって安心して話せる時間だったのかもしれません。
私がこの方から教えられたこと
作業療法士として多くのご夫婦を見てきました。
病気をきっかけに、以前より絆が深まるご夫婦もいます。
一方で、長年連れ添った夫婦でも、病気によって関係が大きく変わってしまうこともあります。
結婚生活が長いから大丈夫。
経済的に余裕があるから安心。
そんな単純なものではありません。
老後に本当に必要なのは、お金だけではなく、病気になった後も支え合える関係を築いておくことなのだと、この方から教えられました。
おわりに
FPとして相談を受けていると、「老後資金はいくら必要ですか」という質問を受けることがあります。
もちろん、お金は大切です。
しかし、現場で多くの人生を見てきた私が思うのは、お金だけでは老後の安心はつくれないということです。
もし夫婦で元気に暮らしている今この瞬間があるなら、一度だけ話してみてください。
「もし病気になったら、私たちはどう支え合うだろう。」
その会話は、保険や預金では代わりにならない、大切な老後の備えになるかもしれません。
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