病院で働いていると、「よくここまで続けられる」と思うご家族に出会うことがあります。
先日担当したのは、88歳のパーキンソン病の女性でした。
病気は進行し、自力で身体を動かすことはほとんどできません。発話も難しく、会話が成り立つ状態ではありませんでした。
毎日病院へ来るのは、50代の息子さんです。
医師の説明を聞き、身体の状態を確認し、マッサージをすることもあります。時には外泊にも連れて帰ります。
外泊をしても、一緒に食事を楽しめるわけではありません。会話が弾むわけでもありません。
それでも病院へ通い続けます。
聞けば、この息子さんが病院へ来られなかったのは、自分自身が脳梗塞で入院していた期間だけだったそうです。
「親孝行ですね」で終わらせてはいけない
この話をすると、多くの方は「立派な息子さんですね」と言います。
私もそう思います。
しかし、現場で長く仕事をしていると、それだけでは終われません。
50代という年代は、仕事で責任を担い、自分自身の健康にも不安が出始める時期です。
実際、この息子さんも脳梗塞を経験しています。
それでも毎日病院へ通い続ける。
私は、この姿を見るたびに考えます。
介護は、介護される人だけの問題ではない。
介護する人の人生も、大きく変えてしまう問題なのです。
介護で失うのは、お金だけではありません
介護というと、「介護費用はいくらかかるのか」という話になりがちです。
もちろん、お金は大切です。
しかし、現場で感じるのは、それ以上に失われるものがあります。
毎日病院へ通う時間。
仕事との両立。
自分自身の健康。
家族との時間。
そして、自分の人生設計です。
これらは家計簿には表れません。
しかし、介護が長く続けば続くほど、確実に積み重なっていきます。
だからこそ、介護は家族だけで抱えないでほしい
日本では、「親のことは子どもが見るもの」という考え方が、今も根強く残っています。
しかし、高齢化が進み、介護期間が長くなる中で、その考え方だけでは支えきれない家庭が増えています。
介護保険サービスを利用すること。
地域包括支援センターへ相談すること。
家族で役割を分担すること。
必要であれば仕事との両立支援を利用すること。
どれも「親不孝」ではありません。
介護を長く続けるために必要な準備です。
福祉特化FPとして伝えたいこと
私は、お金の相談を受けるFPです。
しかし、介護の現場を見続けてきた立場として、お金だけを見ていては本当の問題は見えてこないと感じています。
介護で失われるのは、お金だけではありません。
時間も、健康も、働く機会も、家族との時間も失われる可能性があります。
だから私は、介護を「家計」の問題ではなく、「人生設計」の問題として考える必要があると思っています。
介護は、親が倒れた日から始まるものではありません。
家族の人生を守る準備は、その前から始めるべきものではないでしょうか。
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福祉特化FPとして、介護・障害・相続・住まい・家計を横断したご相談や、医療・介護・福祉関係者向けの講演・研修を行っています。
制度だけでは解決できない「生活全体」を一緒に考えることを大切にしています。


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