AIで障がい者の収入は増えるのか?就労支援の現場から考える新しい働き方

生活が崩れ始めるサイン

AIが普及すると、人間の仕事が減る。

そんな話を耳にすることが増えました。

一方で、障がいのある人にとっては、AIによって新しくできる仕事が増える可能性もあります。

これまで身体機能やパソコン操作の問題で難しかった仕事も、AIを利用することで担当できるかもしれません。

では、仕事の幅が広がれば、障がいのある人の収入も増えるのでしょうか。

今回は、札幌で参加したAI関連イベントでの経験をきっかけに、障がい者の働き方と経済的自立について考えてみたいと思います。

AIが仕事の選択肢を広げる可能性

先日、札幌で開催された「HBA SOLUTION FORUM 2026」に参加しました。

澤円氏による「AIがある世界であなたはどう働く?」という講演を聞き、株式会社HBAが紹介するAI関連技術にも触れる機会がありました。

特に印象に残ったのは、AIを使う目的や、その使用を決める人間の役割についての話です。

AIがどれほど高性能になっても、それを何のために使うのかは人間が考える必要があります。

この考え方は、障がい者の就労支援にも当てはまると思いました。

例えば、片麻痺のある人が事務仕事をする場合です。

キーボードやマウスの操作に時間がかかっても、仕事内容を理解し、適切に判断する能力がある人はいます。

AIを使って文書作成や情報整理の一部を補うことができれば、これまで難しかった仕事を担当できる可能性があります。

これは身体障がいに限りません。

作業工程を整理したり、文章を分かりやすくしたりするAIの機能は、さまざまな特性のある人に役立つ可能性があります。

ただし、本人に合った使い方を検討することが前提です。

仕事ができることと、収入が増えることは違う

ここはファイナンシャルプランナーとして、特に考えたいところです。

AIによって仕事ができるようになったとしても、それだけで収入が増えるとは限りません。

例えば、就労継続支援B型事業所で、AIを利用して商品説明文を作成できるようになったとします。

その結果、出品できる商品数が増えたとしても、商品が売れなければ売上にはつながりません。

売上が増えても、仕入れや送料、販売手数料などの費用が増えれば、利益が残らないこともあります。

B型事業所の工賃向上を考えるなら、単に作業効率を高めるだけでは不十分です。

AIを利用することで、どのような仕事を受注できるのか。

その仕事には、どれくらいの対価が支払われるのか。

継続的な売上や利益につながるのか。

こうした経営面の検討も必要になります。

一般就労につながれば、生活の選択肢も変わる

AIの活用によって、一般企業で担当できる仕事が増える可能性もあります。

例えば、これまで入力作業の負担が大きく、事務職を選びにくかった人が、AIを活用することで文書作成や情報整理を担当できるようになるかもしれません。

ただし、AIがあれば採用されるというわけではありません。

企業が求める仕事を遂行できるか、成果物の正確性を確保できるか、職場でどのような配慮が必要かなど、検討すべきことはあります。

それでも、就職先の選択肢が広がることには意味があります。

安定した賃金収入を得られるようになれば、住まいや日々の生活についても選択肢が増える可能性があるからです。

一人暮らしを始める。通勤しやすい地域に住み替える。将来に向けて貯蓄する。

働くことは、単に収入を得るためだけのものではありません。

自分の生活をどう組み立てるかという問題にもつながっています。

障害年金と働くことは両立できるのか

障がいのある人が働くことを考える際、障害年金との関係を心配する方もいます。

ここは誤解されやすいところです。

障害年金は、働き始めたからといって一律に支給が停止される制度ではありません。

ただし、障がいの状態を判断する際には、就労状況が考慮される場合があります。

また、20歳前の傷病による障害基礎年金には、本人の所得による支給制限があります。

そのため、就労によって収入が増えた場合の影響は、年金の種類や受給の状況によって異なります。

さらに、収入が増えれば税金や社会保険料、各種福祉制度の利用条件などにも影響することがあります。

大切なのは、働くことによって得られる賃金だけを見るのではなく、年金や各種制度を含めた生活全体の収支を確認することです。

AIによって仕事が減る可能性もある

ここまでAIによる仕事の拡大について考えてきましたが、反対の側面もあります。

AIが文章作成やデータ整理などを効率化することで、従来人間が担当していた作業の一部が減る可能性があります。

障がい者就労支援の現場でも、これまで受託していた仕事が変化することは十分考えられます。

だからこそ、AIを使う側になることが重要だと感じています。

単に決められた作業を繰り返すだけでなく、AIを使って仕事の進め方を考え、成果物を確認し、必要に応じて修正する。

そうした能力を身につけることが、今後の働き方の選択肢を広げることにつながるかもしれません。

就労支援の目的は、仕事を与えることだけではない

私は作業療法士として、また就労継続支援B型事業所の経営者として、障がいのある方の仕事に関わっています。

今回のイベントで改めて考えたのは、私たち支援者の役割です。

日々の作業を提供することは大切です。

しかし、それだけではなく、本人が将来どのような仕事をしたいのか、どのような生活を送りたいのかを考える必要があります。

AIによって新しい仕事ができるようになったとしても、それが本人の希望する生活につながらなければ意味がありません。

収入を増やしたい人もいれば、無理のない範囲で働き続けたい人もいます。

一般就労を目指す人もいれば、現在の事業所で安定して働くことを望む人もいます。

大切なのは、AIを使うこと自体を目的にせず、本人が望む働き方や暮らしを実現するために活用することです。

今後は、実際の就労支援の現場でもAIの活用を進め、その効果や課題を確かめていきたいと考えています。

AIで何ができるようになるのか。そして、それによって本人の生活はどう変わるのか。

福祉とお金の両方に関わる立場から、これからも考えていきたいテーマです。


福祉特化FPとして、障害年金、働くことと収入、住まい、将来の生活設計などについて情報発信しています。福祉と家計をテーマにした講演・研修・相談についてもお問い合わせください。

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