障害年金だけで賃貸住宅は借りられる?部屋探しで本当に問題になる「収入」と「暮らし」

家と生活の関係

「障害年金だけで生活していると、アパートを借りるのは難しいのでしょうか」

障害のある人が一人暮らしを考えたとき、かなり大きな問題です。

働いて給与をもらっていれば給与明細や源泉徴収票があります。しかし、収入の中心が障害年金の場合、

「無職だから審査に通らないのではないか」
「障害年金は収入として見てもらえるのか」
「保証人がいないと借りられないのか」

と心配になる人もいるでしょう。

結論から言えば、障害年金を受給しているから賃貸住宅を借りられない、ということではありません。

ただし、ここで私はもう一つ考えたいことがあります。

「借りられる部屋」と「実際に暮らせる部屋」は同じではありません。

私はFPとしてお金を見る一方、作業療法士として障害のある人の生活にも関わってきました。

賃貸契約の審査に通ることは、ゴールではありません。

その家賃を払い続けられるのか。その場所で買い物ができるのか。通院できるのか。冬でも移動できるのか。

障害のある人の部屋探しは、そこまで考える必要があります。

障害年金だけでも賃貸住宅を借りられる可能性はある

まず、「障害年金受給者だから賃貸契約ができない」という制度はありません。

ただし、実際の入居では貸主や管理会社、家賃債務保証会社などによる審査があります。

そこで確認されるのは、

  • 家賃を継続して支払えるか
  • 収入や資産の状況
  • 保証会社を利用できるか
  • 緊急連絡先などを確保できるか

といったことです。

審査基準は会社ごとに異なるため、

「障害年金が月○万円あれば必ず審査に通る」

という基準を一律に示すことはできません。

逆に、「給与所得がないから絶対に借りられない」とも言えません。

部屋を探す段階で、障害年金が主な収入であることを不動産会社に伝え、どのような書類が必要になるのか確認しておく方が現実的です。

実は国も「障害者の住まい」を課題として扱っている

これは個人だけの問題ではありません。

住宅セーフティネット制度では、障害者は高齢者や低額所得者などとともに**「住宅確保要配慮者」**に位置づけられています。

つまり国の制度としても、

障害のある人には住宅確保に配慮が必要な場合がある

とされているわけです。

住宅セーフティネット制度には、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度があります。

さらに2025年10月からの改正制度では「居住サポート住宅」の仕組みも始まっています。大家と支援者などが連携し、安否確認や見守り、生活状況が不安定になった場合の福祉サービスへのつなぎなどを行う住宅です。

これはかなり重要な変化だと思っています。

住宅を確保するだけではなく、その後の生活まで含めて考える方向へ制度自体が動いているからです。

保証人がいない場合にも支援制度がある

障害のある人の部屋探しでは、

「親が高齢で保証人を頼めない」

「頼める家族がいない」

という問題もあります。

厚生労働省には、一般住宅への入居を希望していても、保証人がいないなどの理由で入居が難しい障害のある人を対象にした住宅入居等支援事業があります。

物件のあっせん依頼や契約手続きの支援、家主への相談・助言、関係機関による支援体制の調整などを行う仕組みです。相談窓口は市町村などとされています。

また、都道府県が指定する居住支援法人という仕組みもあります。

障害者、高齢者、低額所得者などに対して、住宅情報の提供や相談、家賃債務保証、見守りなどの生活支援を行う法人です。

ですから、

「保証人がいない=一人暮らしを諦める」

とすぐに考える必要はありません。

まず地域にどんな居住支援があるのかを調べる価値があります。

でも、私は「審査に通った」で終わらせたくない

ここからが、福祉特化FPとして考えたいところです。

例えば障害年金を月8万円受給している人が、家賃4万円の部屋の審査に通ったとします。

それで一人暮らしは成功でしょうか。

もちろん違います。

家賃4万円を払えば残り4万円です。

そこから、

食費、電気、ガス、水道、通信費、日用品、医療費、交通費などを支払います。

しかも賃貸住宅では、家賃以外に共益費や更新料、保証料などが必要になる場合もあります。

借りられる家賃と、払い続けられる家賃は違います。

ここはFPとして、かなり重要だと思っています。

家賃3万円なら「安い物件」なのか

さらに、私は家賃だけで住宅を判断することにも疑問があります。

例えば、

A:家賃3万円。スーパーまで2km。病院まで3km。公共交通が少ない。

B:家賃4万円。スーパーまで300m。病院やバス停も近い。

家賃だけならAが安い。

でも車を運転できない人だったらどうでしょう。

買い物のたびにタクシーを使う。

通院にも交通費がかかる。

冬になると徒歩での移動が難しくなる。

結果として、家賃が1万円安くても生活全体では高くなる可能性があります。

ここが一般的な不動産情報だけでは分かりにくい部分です。

障害の種類によって「暮らせる家」は変わる

さらに、障害のある人を一括りにもできません。

車椅子を使用している人なら、

玄関の段差、廊下幅、エレベーター、浴室、トイレなどが重要になります。

片麻痺がある人なら、手すりの位置や玄関の上がり框、浴室への出入りなどが問題になることがあります。

精神障害がある人なら、身体的なバリアフリーよりも、通院先との距離、相談支援、生活リズムを維持できる環境などが重要になるかもしれません。

発達障害や知的障害がある人なら、金銭管理や契約、生活上の支援体制を考える必要がある場合もあります。

だから私は、

「障害者向け物件」という言葉だけでは足りない

と思っています。

その人がどう生活するのかを見なければ、本当に合う住宅かどうかは分かりません。

「家」ではなく「生活圏」を借りる

私は部屋探しをするとき、建物だけを見るのでは足りないと思っています。

スーパーはどこか。

コンビニはあるか。

病院はどこか。

バス停や駅まで何分か。

冬の道路はどうなるか。

坂道はあるか。

福祉サービスを利用できるか。

働く場所へ通えるか。

そして家族や支援者が必要なときに来られる距離なのか。

住宅を借りるということは、その地域での生活を選ぶことでもあります。

特に地方では、この視点が重要です。

家賃の安い物件はあります。

しかし、家賃が安いからといって、障害のある人にとって暮らしやすいとは限りません。

逆に都市部より家賃を抑えながら、医療・福祉・買い物・公共交通が比較的まとまった地域を選べれば、地方での生活が選択肢になる人もいるでしょう。

障害年金と地方移住という選択肢

ここは今後、私自身ももっと調べていきたいテーマです。

例えば東京で月7万円、8万円の家賃を払いながら生活するのと、地方で3万円、4万円の住宅に住むのでは家計は大きく変わります。

障害年金の額そのものは、東京に住んだから高く、地方に住んだから安くなるというものではありません。

ならば、

収入を増やすだけではなく、暮らす場所を変えることで生活を成立させる

という発想があってもいい。

もちろん、

「地方は家賃が安いから移住しましょう」

という単純な話ではありません。

むしろ障害があるからこそ、

家賃・住宅・医療・福祉・交通・仕事をセットで比較する必要があります。

私はここに、これからの福祉と住まいの大きなテーマがあると思っています。

「障害年金だけで借りられるか」から、もう一歩先へ

障害年金だけでも、条件によっては賃貸住宅を借りられる可能性があります。

保証人などの問題がある場合には、住宅セーフティネット制度や居住支援法人、障害福祉の住宅入居等支援事業など、利用できる可能性のある仕組みもあります。

でも、本当に考えたいのはその先です。

いくらの家賃なら払い続けられるのか。

その住宅で生活できるのか。

その地域で一人暮らしが成立するのか。

そして、

今住んでいる地域以外に、もっと自分に合った暮らし方はないのか。

お金と福祉と住まいを別々に考えるのではなく、一つの生活として考える。

これから私は、この問題をもっと掘り下げていきたいと思っています。


障害のある人の「お金と住まい」を考えていきます

福祉特化FPとして、障害年金や生活費だけではなく、その収入でどこに、どう住めるのかという問題も今後重点的に扱っていきます。

一人暮らし、家賃、賃貸住宅、親亡き後、住み替え、そして地方への移住。

さらに作業療法士として、住宅そのものだけでなく、買い物・通院・交通・福祉サービスなどを含めた「生活圏」まで考えていきます。

お金の計算だけでも、不動産情報だけでも解決できない。

「この人が、この場所で本当に暮らしていけるのか」

そこまで考えることが、これから取り組みたい住まい支援です。

相談のほか、福祉・障害・お金・住まいをテーマとした講演や研修のご相談もお受けしています。

制度を調べたい方へ

国土交通省「住宅セーフティネット制度」

厚生労働省「障害のある人に対する相談支援」

国土交通省「居住支援法人について」

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