「障害があると生命保険には入れないのでしょうか」
障害のある本人や家族にとって、気になる問題の一つだと思います。
病気や障害があることで生命保険への加入を断られた経験がある人もいるでしょうし、「障害者手帳を持っているだけで加入できないのでは」と考えている人もいるかもしれません。
結論から言えば、
障害がある=生命保険に入れない、ではありません。
もう一つ先に考えてほしいことがあります。
それは、「入れる生命保険はどれか」より、「そもそも生命保険で何に備えたいのか」
ということです。
障害のある人には、障害年金や医療費を軽減する制度など、一般的な家計とは少し違った公的保障があります。
一方で、就労状況や家族構成によっては民間保険の必要性が高い人もいます。
今回は「障害者は生命保険に入れるのか」だけではなく、障害のある人の生命保険をどう考えればいいのかを整理します。
障害があるだけで生命保険に入れないわけではない
まず、ここは誤解しない方がいいところです。
生命保険への加入は、単純に「障害者か、障害者ではないか」だけで決まるものではありません。
保険会社や商品によって引受基準は異なり、健康状態、治療歴、服薬状況などを踏まえて個別に判断されます。
したがって、
「身体障害者手帳を持っているから入れない」
「精神障害があるから全部の生命保険に入れない」
と一律には言えません。
反対に、
「障害者でも入れる生命保険」
という言葉だけを見て、誰でも必ず加入できると考えるのも危険です。
保険商品によって告知する内容も引受条件も違うからです。
ここは個別の商品について保険会社や募集代理店に確認する必要があります。
病気や治療歴がある場合は「告知」が重要になる
生命保険に申し込むときには、現在の健康状態や過去の病気、治療歴などについて告知を求められる場合があります。
ここで重要なのは、
自分で「これは大した病気ではないから書かなくていい」と判断しないことです。
告知を求められた事項については、事実を正確に伝える必要があります。
また、
「障害があること」
と
「現在どのような病気があり、どのような治療を受けているか」
は必ずしも同じではありません。
例えば同じ身体障害者手帳を持っている人でも、障害の原因も現在の健康状態も違います。
精神障害についても、診断名だけでなく、現在の治療状況や経過などがあります。
だからこそ、
「障害者は生命保険に入れる・入れない」と一括りにすること自体が難しいのです。
一般の生命保険が難しければ、別の商品もある
健康状態などによって一般的な生命保険への加入が難しい場合には、告知項目を限定した「引受基準緩和型」と呼ばれる商品などが選択肢になることがあります。
ただし、
「入れる保険が見つかった=それに入るべき」ではありません。
一般的に加入条件が緩やかな商品は、通常の商品とは保険料や保障内容などが異なることがあります。
大切なのは、
「加入できるか」
だけではなく、
「その保障内容に、その保険料を払い続ける意味があるか」
まで見ることです。
私はここが非常に重要だと思っています。
障害がある人こそ「民間保険だけ」を見ない
ここからが一番伝えたいところです。
保険について考えるとき、
「病気になったら医療保険」
「亡くなったら生命保険」
と、すぐ民間保険から考えてしまうことがあります。
でも日本には公的保障があります。
例えば病気やけがによって生活や仕事が制限されるようになった場合、一定の要件を満たせば障害年金を受給できる場合があります。日本年金機構も、障害年金は現役世代を含めて対象となり得る制度として案内しています。
精神疾患で継続的な通院が必要な場合には、**自立支援医療(精神通院医療)**によって医療費の自己負担を軽減できる場合もあります。
自立支援医療は精神通院医療だけではなく、更生医療、育成医療もあり、所得などに応じて自己負担を軽減する公費負担医療制度です。
もちろん、これらが生命保険の代わりになるという意味ではありません。
何に対して、すでに公的保障があり、何が不足しているのか。
そこを確認してから民間保険を考えた方がいいということです。
「障害があるから保険が必要」とも限らない
例えば、一人暮らしをしている人を考えてみます。
扶養している配偶者も子どももいない。
自分が亡くなった後に、長期間生活費を残さなければならない家族もいない。
この場合、死亡保障を何千万円も準備する必要があるでしょうか。
逆に、障害があっても働いていて、配偶者や子どもの生活を支えている人なら話は変わります。
本人が亡くなったときに家計がどうなるのか。
遺族年金などの公的保障はいくらあるのか。
預貯金はいくらあるのか。
住宅ローンは残るのか。
子どもの教育費はどうするのか。
それを計算した結果、不足するのであれば民間の死亡保障を検討する意味があります。
つまり、
生命保険の必要性を決めるのは「障害の有無」ではなく、その人の生活です。
これは障害のない人でも同じですが、福祉の制度を利用している人の場合、公的保障を含めて考える必要があります。
医療保険も「入れるか」だけで考えない
医療保険についても同じです。
持病がある。
継続的に通院している。
将来の入院が心配。
そうなると、
「入れる医療保険を探さなければ」
と思うのは自然です。
でも、まず確認したいのは実際に自分が負担する医療費です。
公的医療保険には高額療養費制度がありますし、障害の内容によっては自立支援医療などが利用できる場合があります。
自立支援医療では、対象となる医療について原則として医療費の1割を限度とした負担となり、所得などに応じて月ごとの負担上限額も設定されています。
自治体によっては、障害のある人を対象とした独自の医療費助成制度がある場合もあります。
そのうえで、
「入院したら実際にいくら不足するのか」
を考える。
保険は、その不足を埋めるためのものです。
制度で足りる部分まで民間保険で二重三重に備える必要があるのか。
これは保険に加入する前に一度計算してみる価値があります。
私が福祉の現場で気になるのは「毎月払えるか」
そして、もう一つあります。
保険料は一回払って終わりではありません。
毎月払い続けます。
例えば月5,000円なら年間6万円。
10年間なら単純計算で60万円です。
障害年金を中心に生活している人にとって、月5,000円は決して小さな金額ではありません。
収入が限られているなら、
生命保険。
スマートフォン。
家賃。
食費。
光熱費。
通院費。
交通費。
そのすべてが同じ財布から出ていきます。
「将来が心配だから保険に入る」
その気持ちは分かります。
でも、将来のリスクに備えるための保険料によって、今の生活が苦しくなってしまったら本末転倒です。
ここは保険商品だけを見ていると、見落としやすいところだと思います。
親が子どものために保険を考える場合もある
障害のある子どもを持つ親の場合には、少し視点が変わります。
「自分たちが亡くなった後、この子はどうやって暮らすのか」
という不安があります。
そこで生命保険を使って、子どもにお金を残そうと考える家庭もあるでしょう。
これは十分考えられる方法です。
ただし、ここでも生命保険だけで「親亡き後」を解決することはできません。
住まいはどうするのか。
誰がお金を管理するのか。
障害年金はいくらあるのか。
働くことはできるのか。
どの福祉サービスを利用するのか。
相談できる人はいるのか。
残した資産をどう管理するのか。
お金を残すことと、そのお金を使いながら生活できる仕組みを残すことは別です。
生命保険は、その中の一つの道具として考えるべきだと思います。
「障害者でも入れる保険」を探す前に確認したいこと
ここまでをまとめると、私は次の順番で考えます。
- 何に備えたいのか
- 公的保障でどこまでカバーできるのか
- 預貯金で対応できる金額はいくらか
- それでも不足する金額はいくらか
- その不足を補う保険に加入できるか
- その保険料を無理なく払い続けられるか
この順番です。
いきなり、
「障害者でも入れる保険ランキング」
から始める必要はありません。
むしろ順番は逆だと思います。
障害者の保険を考えるなら「保険」ではなく「生活」から
私はFPですが、同時に福祉の現場にもいます。
だから生命保険について考えるときも、保険商品だけを見ることには少し違和感があります。
障害年金はいくらなのか。
給与はいくらなのか。
家族と暮らしているのか。
一人暮らしなのか。
医療費はいくらなのか。
福祉サービスを利用しているのか。
将来どんな生活をしたいのか。
その全体を見た結果、
「ここだけは民間保険で備えた方がいい」
という不足が見つかったら、そこで初めて保険を探せばいい。
障害がある人でも生命保険に加入できる可能性はあります。
でも、本当に大切なのは、
「入れる保険があるか」ではなく、「自分の生活に必要な保険なのか」。
私はそこから考える方が、ずっと大事だと思っています。
福祉とお金の相談をお受けしています
障害年金、生活費、保険、親亡き後、一人暮らしなど、障害のある人のお金の問題は、一つの制度や金融商品だけでは整理できないことがあります。
公的制度・家計・住まい・仕事・福祉サービスまで含めて生活全体から整理します。
「保険に入った方がいいのか分からない」「障害年金だけで将来暮らせるのか」といった段階からでも構いません。
講演・研修についても、障害のある人と家族の家計、親亡き後、障害年金、福祉とお金などのテーマでご相談をお受けしています。
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