病気や障害で、今までの仕事が難しくなった。これからの収入をどう考える?

生活が崩れ始めるサイン

暮らしを支えながら、自分で稼ぐ道を探す

退院したら、以前の生活に戻れると思っていた。ところが、通勤だけで疲れてしまう。仕事中は何とか頑張れても、帰宅すると食事や入浴まで手が回らない。治療の予定もあり、以前と同じ時間、同じ仕事を続けるのは難しい。

それでも、家賃や食費の支払いは続きます。子どもの教育費も、住宅ローンも、こちらの体調に合わせて減るわけではありません。

病気や障害をきっかけに、これからの収入を考え直さなければならなくなることがあります。年齢を重ね、以前のような働き方が難しくなった人にも、似た悩みがあるでしょう。

「今までのようには働けない。でも、自分で収入を得ることまで諦めたくない」

本人だけでなく、そばにいる家族も、何か方法はないかと探しているかもしれません。

こうしたとき、私は生活を支える制度や家計の見直しと一緒に、これからどんな方法なら、自分で収入を得られるのかを考えることが大切だと思っています。

前の仕事が難しいと、これまでの経験まで使えなくなるのか

長く続けてきた仕事ほど、離れることには大きな不安があります。収入だけでなく、自分の役割や、人とのつながりが変わることもあるからです。

そして、「この仕事ができなくなったら、自分には何ができるのだろう」と考えることがあります。

ただ、仕事の名前だけで考えると、使える経験まで見えなくなることがあります。

例えば、接客の仕事には、人と話すことだけでなく、商品を覚える、相手の希望を聞く、説明する、注文を確認する、売場を整えるといった作業があります。事務の仕事にも、入力、文章作成、確認、整理、日程調整など、いくつもの要素があります。

立ち続けることや通勤が難しくなっても、商品の知識や説明する力まで失われたとは限りません。以前と同じ速さで作業できなくなっても、間違いに気付く力や、丁寧に仕上げる力が残っていることもあります。

まずは今の仕事について、勤務時間や業務内容、通勤方法を調整できないか確認することも必要です。厚生労働省も、治療と仕事の両立に向けた情報や支援機関を案内しています。病気になったことだけで、直ちに退職や別の仕事への転換を決める必要はありません。mhlw.go.jp

そのうえで、以前の仕事に戻ることが難しい場合には、仕事のどの部分なら、今の自分でも担えるかを考える。その経験を別の働き方へ持っていく方法を探します。

家計を守ることと、自分で稼ぐ道を探すことを一緒に考える

収入が減ったときには、まず毎月の家計を確認する必要があります。

今入ってくるお金はいくらか。家賃、食費、光熱費、医療費などにいくら必要か。預貯金を取り崩しているなら、どのくらいの速さで減っているのか。

ここが曖昧なままでは、新しい仕事を試すために使えるお金や時間も決めにくくなります。

一方で、支出を減らすことだけを続けていると、暮らしが小さくなっていくことがあります。外出を減らす。趣味をやめる。人に会わなくなる。必要な買い物まで我慢する。

家計を守るための見直しは大切です。しかし、その人が望む生活を続けるためには、収入を得る側も考えたいのです。

その際は、「何となくもっと稼ぎたい」から一歩進めて、増えたお金で何をしたいのかを整理します。

毎月の生活費の不足を埋めたいのか。自分の趣味に使うお金がほしいのか。家族に負担してもらっている支払いを、自分で持ちたいのか。将来、一人暮らしを始めるために貯めたいのか。

目的が見えると、必要な金額も変わります。

例えば、仮に毎月5,000円を積み立てられれば、1年間で6万円になります。生活費全体を支える金額ではなくても、家電の買い替えや引っ越しに備えるお金にはなります。

ただし、毎月数万円の赤字がある家計なら、小さな販売収入だけで解決できるとは限りません。利用できる給付や支援、固定費、家族全体の家計も合わせて考える必要があります。

**新しい収入にどの役割を持たせるか。**そこをはっきりさせることで、無理な目標を背負わせず、具体的に取り組めるようになります。

ネットで学ぶことが、知らなかった仕事を試す入口になる

新しい仕事を探すとき、自分が知っている仕事だけで考えてしまうことがあります。

しかし、やったことのない作業について、向いているかどうかを判断するのは難しいものです。「パソコンの仕事は無理」「物を売るなんてできない」と思っていた人でも、一つの工程に触れると、印象が変わることがあります。

私が運営する事業所では、古着の販売に取り組んでいます。古着を1着売るだけでも、状態を確認する、サイズを測る、服を整える、写真を撮る、商品情報を入力する、値段を付ける、梱包するなど、いくつもの工程があります。

「販売の仕事」とまとめてしまえば難しく感じても、写真なら取り組めるかもしれません。採寸や検品が得意な人もいるでしょう。

ネットで学ぶ機会は、こうした作業を知り、実際に試す入口になります。

自宅にある物を使って、販売用の写真を撮ってみる。商品の特徴を短い文章にしてみる。手作りした物を、買う人に伝わるように紹介してみる。

最初から商売全体を覚えるのではなく、一つの作業を動かしてみる。その経験から、「これは続けたい」「ここは教わりたい」が見えてきます。

ただし、一つの工程ができることと、一人で販売を続けられることは別です。購入者との連絡、在庫の管理、発送まで必要になります。どこを自分で行い、どこで助けを借りるかも、試しながら考えます。

学びは、その人に仕事を押し付けるためではありません。本人が選べる仕事を増やすために使いたいのです。

「家でできる」を、実際に続けられる形にする

在宅で取り組めれば、通勤の負担を減らせます。治療や休憩に合わせて作業を分けやすくなる場合もあります。

しかし、家にいれば何でもできるわけではありません。

パソコンに向かっていると疲れる。片手では商品を押さえながら撮影しにくい。細かい文字が読みづらい。手順を一度聞いただけでは覚えられない。発送のために外出することが負担になる。

こうした問題があるとき、「慣れればできます」で済ませず、方法を変えてみます。

撮影する物を固定する。手順を写真で残す。入力する内容をあらかじめ用意する。作業台の高さを調整する。一度に行う量を減らす。分からないところを確認できる時間を決める。

作業そのものができても、その後の生活が崩れるなら、量や時間を見直す必要があります。仕事が終わったあとに食事を作れるか。翌日の通院に行けるか。今続けている仕事にも支障が出ないか。

その確認は、挑戦を止めるためではありません。続けられる条件を見つけるためです。

最初は短い時間しかできなくても、手順や道具が合えば、担える部分が増えることがあります。今の状態だけで可能性を決めず、実際の作業を通して確かめたいと思います。

家族の手助けを、本人ができるようになる方向へ使う

家族が「何かできる仕事はないか」と探している場合もあるでしょう。

最初の会員登録を手伝う。撮影場所を一緒に整える。説明文を確認する。発送に付き添う。こうした手助けによって、始められることがあります。

ただ、家族がすべて代わりに行うと、本人がどこを担えるのか分からないままになります。家族の時間や労力も、続けるために必要な条件です。

例えば、撮影は本人が行い、文章は一緒に確認する。梱包は本人が行い、発送は家族がほかの用事と合わせて手伝う。何度も迷う操作は、毎回代わりに行うより、見ながら進められる手順を作る。

本人の希望を確かめながら、役割を決めていくことが大切です。

「一人で全部できる」を最初から目指す必要はありません。その人が担える部分を持ち、必要な助けを使って収入につなげる方法もあります。

同時に、家族が忙しい週にも続けられるのか、家族以外に確認できる相手はいるのかも考えておくと、取り組みが安定しやすくなります。

売れたお金を、次の収入と暮らしにつなげる

自分が用意した物を、誰かが買ってくれる。自分の作業に対して、お金が支払われる。

その経験は、次に何を学ぶか、何を続けるかを考える材料になります。

ここで家計として確認したいのは、売上と、手元に残るお金です。

例えば、次の数字は計算のための仮定です。

項目金額
売上2,000円
販売にかかる手数料200円
送料450円
梱包材100円
仕入れ・材料費500円
差し引き残るお金750円

この場合、暮らしに回せるお金を考える出発点は、売上の2,000円ではなく、差し引き750円です。作業にかかった時間や、ほかの経費も確認します。実際の料金は、利用するサービスや発送方法によって変わります。

また、自宅の不用品を売る場合と、商品を仕入れたり制作したりして販売を続ける場合では、お金の動きが違います。

仕入れた物が売れなければ、お金は在庫の形で残ります。次の商品を用意するお金も必要です。売上をすべて生活費に使えば、販売を続けるための資金が足りなくなることもあります。

だから、少量で試し、何が売れたか、いくら残ったか、どの作業に時間がかかったかを振り返る。その結果を次の販売へ使います。

自分で稼ぐ力を育てるには、出品操作だけでなく、お金を残し、次の仕事につなげることまで学ぶ必要があります。

これからの働き方を、自分だけで決めなくてよい

病気や障害によって、仕事も収入も、将来の予定も変わることがあります。以前の生活との差が大きいほど、これからのことを考えるのは簡単ではありません。

それでも、「前の仕事に戻れない」から先に、考えられることはあります。

使える経験を探す。新しい作業を学ぶ。実際に試す。必要な道具や支援を整える。残るお金を確かめる。そして、その収入を本人が望む暮らしにつなげる。

私は、福祉特化FPとして、この一連の過程を支えることを大切にしたいと思っています。

ネットで売る方法だけを覚えても、家計や体調に合わなければ続きません。一方で、家計の数字を整理するだけでは、新しい仕事に取り組めるようにはなりません。

生活とお金を見ながら、本人が実際にできることを増やしていく。

今までの働き方が難しくなった人にも、自分で収入を得たいという希望があります。その希望を、具体的な作業と暮らしの計画へつなげていきたいと思います。

働き方・収入・家計を一緒に考えたい方へ

「今の体調で、どんなことなら取り組めるだろう」「ネット販売を始めたいけれど、何から学べばよいか分からない」「家族として、どこまで手伝えばよいのだろう」。

福祉特化FPでは、本人や家族のこうした悩みについて、家計だけでなく、生活や作業の条件も合わせて整理します。新しい学びや収入づくりの支援についても、現在、内容を検討しています。ご希望のある方は、今困っていることや、取り組んでみたいことをお聞かせください。

個別相談のご案内
お問い合わせ

福祉・医療関係者向けには、病気や障害のある人の暮らしとお金、働き方についての講演・研修も承っています。

講演・研修のご依頼

関連記事

福祉特化FP
「スマホが使えない」だけで、行けない場所が増えていく
デジタル機器を使えるかどうかで、利用できるサービスや暮らしの選択肢が変わることを考えています。

福祉住環境研究所
握力が弱くても「できる」に変えられる。生活の困りごとを道具で解決する5つの方法
本人の力だけで判断せず、道具や環境を変えて取り組める方法を探す記事です。

サチエル・ロビンソン
「この仕事はできない」で終わらせない。仕事を細かく分けると、できることが見えてくる
古着販売などの実際の工程から、一人ひとりが担える仕事を探す考え方を紹介しています。

参考資料

※本文の収支表は考え方を示す仮定の例です。個別の給付・年金などの利用条件や就労との関係は、加入状況や制度によって異なるため、該当する窓口で確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました