「収入を増やしたい」のに、できる仕事が見つからない

生活が崩れ始めるサイン

ネットで学ぶことは、暮らしの選択肢を広げられるか

「もう少し収入があれば」と思う場面は、日々の暮らしの中にあります。食費や光熱費の支払いだけではありません。友人と出かけたい。趣味に使うお金がほしい。家族に何か買ってあげたい。今の家を出て、自分で暮らしてみたい。

その希望に対して、「では、もっと働きましょう」と言うだけでは話が進まない人もいます。

障害や病気によってできる仕事が限られる。通勤できる範囲に求人がない。介護や子育てがあり、決まった時間に家を空けられない。今の仕事は続けられていても、勤務時間を増やす余裕はない。収入を増やしたい気持ちがあっても、今の働き方の延長では難しいことがあります。

一方で、ネット上には、物を売る、文章を書く、画像を作る、情報を整理するなど、さまざまな仕事があります。それらを学ぶ機会もあります。

ただ、そこで「ネットなら誰でも稼げる」と話を飛ばしてしまうと、生活の実態から離れてしまいます。考えたいのは、今まで知らなかったことを学び、自分で試せるようになることで、収入や暮らしの選択肢が増えるのかということです。

「自分にできる仕事」は、知っている仕事の中から選んでいる

仕事を探すとき、多くの人は、これまで経験した仕事や、身近にある仕事から考えます。

接客をしてきた人なら接客。事務をしてきた人なら事務。体を使う仕事をしてきた人なら、体を使う仕事。その経験は大切ですが、体調や家庭の事情が変わると、それまでの仕事が難しくなることがあります。

そこで「もう自分にできる仕事はない」と感じても、まだ触れたことのない仕事までできないと決まったわけではありません。

例えば、ネットで物を売るといっても、商品の写真を撮る、状態を確認する、説明を書く、価格を考える、梱包するなど、いくつもの作業があります。ひとまとめに「ネット販売」と言われても想像しにくかった人が、実際に一つずつ触ってみると、「写真を撮るのは面白い」「説明を書くのはできそうだ」と感じるかもしれません。

反対に、得意だと思っていた作業が、やってみると疲れることもあります。

こうした違いは、仕事の名前や本人の意欲だけでは分かりません。選ぶ前に、知る機会と試す機会が必要です。

「何がしたいですか」と聞かれても、知らないものについて希望を持つのは難しい。学ぶ機会には、自分の希望を見つける役割もあります。

同じ月5,000円でも、暮らしの中で持つ意味は違う

収入の話になると、「月にいくら稼げるか」が注目されます。

もちろん、金額は大切です。ただ、その金額が本人の暮らしをどう変えるのかも、合わせて考える必要があります。

仮に毎月5,000円、使えるお金が増えたとします。年間では6万円です。それで生活費全体を賄うことはできません。それでも、趣味を続ける費用になる人もいれば、友人に会いに行く交通費になる人もいます。家族に頼んでいた支払いの一部を、自分で負担できるようになる人もいるでしょう。

一方、その5,000円を得るために長時間作業をして、今の仕事を休むようになったらどうでしょうか。材料費や送料を差し引くと、ほとんど残らない場合もあります。

家計として見るなら、売上だけでなく、費用を引いて残るお金と、その収入を得るために必要な時間を見ます。生活として見るなら、疲れ方や、ほかの用事への影響まで見ます。

目指したいのは、金額だけが増えることではありません。増えたお金によって、本人が望む暮らしに近づけることです。

そのためには、最初に「何のために、もう少し収入がほしいのか」を考えておくと、試す仕事や学ぶ内容を選びやすくなります。

ネットで学べても、ネットで働けるとは限らない

動画を見ることと、自分で作業を進めることには違いがあります。

説明を聞けば分かる。でも、一人で画面を開くと、どこから始めればよいか分からない。手順どおりならできるけれど、表示が少し変わると止まってしまう。作業そのものはできても、相手への連絡や締め切りの管理が難しい。

これはネットの仕事を考えるうえで、見落とせない部分です。

在宅でできる仕事は、通勤の負担を減らせます。しかし、仕事の管理まで自分で引き受ける場合があります。自宅だから自分に合うとは限らず、誰かに確認できる環境があれば続けられる人もいます。

だから、学ぶ段階から、完成したものだけを見るのではなく、どのように作業できたかを確かめたいのです。

一人で進められたのか。途中で確認が必要だったのか。短い時間に分ければできたのか。終わったあとに、食事や入浴、翌日の仕事まで支障なくできたのか。

この確認ができれば、「できない」で終わらず、必要な助けや、自分に合う作業の条件が見えてきます。

学んだことが、収入になるとは限らない。それでも暮らしに役立つことがある

学びをすべて収入に結びつける必要はありません。

ネット販売を試した結果、継続して商品を売るのは自分に合わないと分かることもあります。それでも、家にある不要な物を自分で出品できるようになるかもしれません。

画像や文章を作ることを学んでも、仕事として依頼を受けるところまでは進まないかもしれません。それでも、地域の活動のお知らせを作ったり、自分の作品を紹介したりできるようになることがあります。

買い物や予約、交通機関の利用について学ぶことなら、直接の収入は生まれません。しかし、家族に頼んでいた用事を自分で済ませられるようになる可能性があります。

以前の記事では、スマホを使えないことで、利用できる店やサービスが減っていく問題を考えました。同じお金を持っていても、そのサービスを自分で利用できるかどうかによって、選べる暮らしは変わります。

新しく学ぶことは、その選択肢を増やす方向にも働きます。

収入を得る力と、生活上の用事を自分で進める力。どちらも、これからの暮らしを考えるうえで大切です。

学ぶ費用は、これからの家計と一緒に考える

学びには、お金と時間がかかります。

月額の受講料だけでなく、パソコンや通信環境、道具や材料が必要になることもあります。費用が安くても、説明を見て終わり、実際には何も試せなければ、本人が求めていた機会にはなりません。

学ぶ内容を選ぶときには、「これでいくら稼げるか」という宣伝だけでなく、最初に何を試せるのか、自分の環境で取り組めるのか、困ったときに確認できるのかを見たいところです。

家計の側では、今の収入から継続して払える額を考えます。これから得られるかもしれない収入を、先に生活費の当てにするのは難しいからです。

ただし、家計が厳しいからといって、新しいことを学ぶ費用をすべて削ってよいとも思いません。今の働き方や生活に行き詰まりがあるとき、選択肢を探す機会までなくしてしまうことになるからです。

無理なく使える範囲で、実際に試し、続けるかを判断する。そのための学びであってほしいと思います。

今の暮らしの中に、新しいことを試す余地をつくる

私は今、仕事や日常生活、趣味など、さまざまな分野を短く学び、試せる場を考えています。

福祉の現場では、本人が何を望んでいるかを大切にします。一方で、まだ知らない仕事や暮らし方については、希望を聞くだけでは選択肢に上がってきません。触れてみて初めて、「もっとやってみたい」と思うことがあります。

障害のある人にも、介護や子育てで時間に制約がある人にも、今の仕事を続けながら別の可能性を探したい人にも、そうした機会は必要だと考えています。

ネットで学べば収入が増える、と約束することはできません。それでも、今知っている仕事だけで、これからの可能性を決めてしまう必要はありません。

家計を見直すとき、支出を減らすことや、今の働き方で収入を増やすことに加えて、**「これから何をできるようになれば、自分が選べる暮らしが増えるだろう」**と考える。

その問いを、生活とお金の両方から扱っていきたいと思っています。

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