一人暮らしのお金と、助けを借りて始める仕事
一人暮らしの生活費を計算すると、もう少し収入があればと思うことがあります。
毎月の支払いに余裕を持ちたい。急な出費に備えたい。家族に頼んでいる支払いを、自分で負担できるようになりたい。
そこで、自宅でも取り組める仕事を調べ、ネットで物を売る方法に関心を持つ人もいるでしょう。しかし、調べるほど難しそうに感じることがあります。
何を売ればよいのか分からない。商品の説明を書ける自信がない。出品画面の操作が難しそう。購入者から質問されたら、どう答えればよいのだろう。
「自分には、そこまでできない」
そう思って、始める前に諦めてしまうかもしれません。
ただ、ここで一つ考えてみたいことがあります。自分で収入を得るためには、最初からすべてを一人でできなければならないのでしょうか。
私は今、自分自身の販売と福祉の現場での実践を通して、助けを借りながら仕事を始める方法を考えています。
私自身も、分からないところで手が止まっています
私は古着や中古ブランド品を販売しています。現在は、国内だけでなく、海外の販売サイト「eBay」への出品にも取り組んでいます。
商品は手元にあります。状態を確認し、写真を撮り、寸法も測っています。それでも、海外向けに出品しようとすると、手が止まりました。
英語で何と書けばよいのか。画面の項目には、何を入力すればよいのか。
日本語なら説明できる商品でも、英語になると進めにくくなります。
そこで、AIに助けてもらいながら進めています。こちらが確認した商品の情報を渡し、英語の説明文を作る。分からない入力項目が出てきたら、その意味を確認する。一度にすべてを覚えるのではなく、今止まっているところを解決して、次へ進んでいます。
もちろん、AIが商品の状態まで正しく知っているわけではありません。寸法や傷、付属品などは、こちらで確かめます。作られた文章にも、確認していない情報が入っていないかを見ます。
それでも、苦手な部分に助けが入ることで、出品作業は進んでいます。まだ、これによって海外販売で利益が出たと報告する段階ではありません。しかし、始めるための進み方は変わりました。
この経験からも、「全部できるようになってから始める」という順番だけではなくてよいと感じています。
「自分で稼ぐ」と「誰の助けも借りない」は別のこと
一人暮らしを考えるときにも、似たことがあります。
一人で住むからといって、生活上の用事をすべて自分だけで済ませなければならないわけではありません。家族や福祉サービス、宅配などを使いながら、自分の暮らしを続ける方法があります。
収入を得ることも、同じように考えられないでしょうか。
文章を整えるところにはAIを使う。初めての操作は、分かる人と確認する。商品を選ぶことが難しければ、用意された少量の商品から販売を経験する。
助けを借りても、本人が商品の状態を確かめ、価格を考え、購入した人へ届ける経験は残ります。
大切なのは、本人が何を担い、何を確かめ、どこで助けを使うのかが分かっていることです。「自分で収入を得たい」という希望に対して、最初から一人で全部できることを条件にすると、始められる人を必要以上に限ってしまいます。
一方、ほかの人がすべて行い、本人は何が起きているか分からない状態も、私が目指したい支援ではありません。
本人が仕事の中に自分の役割を持ち、必要な助けを使って進められる形を考えたいのです。
白紙から書くのが難しくても、確認する仕事には関われる
私が運営する就労継続支援B型事業所では、メルカリへの出品に使う画像の仕上げや、商品説明文の作成にAIを使っています。
例えば、商品を見て特徴が分かっていても、それを文章にまとめるところで手が止まることがあります。
何から書くのか。どういう順番にするのか。買う人に伝わる文章になっているのか。
そこで、確認した商品情報から、AIに説明文の下書きを作ってもらいます。下書きがあれば、実物と見比べながら、サイズや特徴が合っているか、傷や汚れの説明が抜けていないかを確認できます。
白紙から文章を作ることと、文章を読みながら確かめることでは、取り組みやすさが違います。
画像についても、AIで仕上げた後に、実物と色や形が違っていないか、傷や汚れが消えていないかを確かめます。
AIを使えば全員が同じようにできるわけではありません。職員の確認や補助が必要な場面もあります。それでも、道具を使うことで、本人が関われる工程が変わっています。
これは、練習だけの話ではありません。実際に販売する商品の情報を、お客さんに伝える仕事です。
収入につながる仕事を考えるときにも、できない部分だけを見るのではなく、助けが入れば、どこを担当できるのかを見る必要があります。
不用品を売った後の「次の商品」も、一人で探すしかないのか
最初の出品は、家にある不要な物から始められます。仕入れにお金を使う前に、販売の流れを経験できるからです。
ただ、販売を続けたいと思うと、次の課題が出てきます。
家の物を売り終えたら、次は何を売るのか。
商品を仕入れるには、売れそうな物を見分け、価格や状態を確認する必要があります。自分のお金を使うため、判断に迷うのは自然なことです。
外出して商品を探すことが難しい人もいれば、ネットで仕入れようとしても、実物を見ずに買うことが不安な人もいるでしょう。
私は現在、自分たちの仕入れと販売を進めながら、販売を始めたい人に少量の商品や商品情報を用意する方法も検討しています。
ただし、商品を渡せば解決するとは思っていません。
説明文が書けずに止まる。出品できても、質問への返事に困る。売れないまま、次の商品が届く。そうなれば、本人の手元には在庫と支払いが残ります。
商品を用意することと、販売を進めるための支援を組み合わせる。そして、前の商品が残っているなら、次を増やす前に売り方を確認する。
届ける側の都合よりも、本人が販売を続けられる量と進み方を考える必要があります。
支援を受けた後に、本人のお金はいくら残るか
助けを借りれば進めやすくなる一方で、費用がかかる場合があります。
商品代、販売手数料、送料、梱包材。さらに、有料のサポートを利用するなら、その料金も必要です。
例えば、次の数字は考え方を示すための仮定です。特定の販売サイトや、準備中のサービスの料金ではありません。
| 1か月の販売の例 | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 15,000円 |
| 売れた商品の仕入れ代 | 6,000円 |
| 販売手数料・送料・梱包材 | 4,000円 |
| サポート料 | 1,000円 |
| 差し引き残るお金 | 4,000円 |
この例では、売上は1万5,000円ですが、費用を引いて残るのは4,000円です。ほかにも経費や税負担などがあれば、それを含めて考えます。
また、この月に翌月用の商品を追加で買っていれば、その支払いもあります。売れ残った商品の購入代金も、すでに手元から出ています。
一人暮らしの生活費に使えるお金を考えるなら、売れた物の利益だけでなく、実際の入金と支払いも見なければなりません。
そして、毎月同じ額が残るとは限りません。販売に慣れるまでは、家賃のように必ず支払う費用の当てにするより、予備費を少しずつ増やす使い方から考えることもできます。
支援を使って売れたことと、暮らしに回せるお金が増えたこと。その両方を確認する。
福祉特化FPとして、ここを曖昧にしたくありません。
家族の手助けも、続けられる形にする
家族が一緒に取り組む場合にも、役割を確認しておきたいところです。
本人が商品を確認し、家族が説明文を一緒に読む。本人が梱包し、家族が発送の持ち込みを手伝う。そうした協力で、できるようになることがあります。
ただし、家族にも仕事や生活があります。毎回長い時間を使わなければ進まない状態では、負担が積み重なるかもしれません。
何を本人が行うのか。どの場面で家族の助けが必要なのか。繰り返す質問は、手順や見本にできないか。家族以外に相談できる相手はいるのか。
そこまで含めて、続け方を考えます。
また、本人の意向を確かめることも欠かせません。家族は収入を増やしてほしくても、本人はまだ一度試したい段階かもしれません。
最初の販売を経験し、本人がどう感じたかを聞く。続けたいなら、次に必要な助けを考える。その順番を大切にしたいと思います。
私たち自身も、助けを使いながら事業を育てています
私たちの物販の目標は、月間200点販売、月間純利益50万円です。これは、これから目指す事業全体の目標です。
仕入れ、商品の確認、手入れ、撮影、説明文、販売、発送。そのすべてを私一人で行う形ではなく、事業所での分担やAIの活用も含めて、仕事を組み立てています。
その過程で、どの商品が売れたのか、費用を引いていくら残ったのか、どこに時間がかかったのかを確かめていきます。
これから販売を始める読者に、同じ規模を求めるわけではありません。私たちが実際に進める中で分かったことを、本人や家族が、自分たちに合う規模で使える形にしたいと考えています。
「教える側だから全部できる」ということでもありません。私自身、英語で止まり、AIに聞きながら進めています。
だからこそ、分からないところがある人に対して、「全部覚えてから来てください」とはしたくないのです。
一人暮らしを支える方法を、一つずつ増やす
一人暮らしのお金を考えるときには、今の収入、生活費、利用できる支援を整理することが基本になります。
そのうえで、自分で収入を得たいと思うなら、何から試せるかを考える。最初から全部できるかどうかではなく、今できることと、助けが必要なところを確かめる。
一度取り組めば、次の疑問も具体的になります。
価格をどう決めるか。次は何を売るか。費用をどう記録するか。どの作業なら続けたいか。
その疑問に答えながら、本人が担える部分を増やしていく。必要な支援を使い、暮らしに回せるお金を確かめていく。
自分で収入を得ることを、一人ですべて抱えることにしない。
そうした始め方を、福祉特化FPとして具体的に作っていきたいと考えています。
ネット販売と家計を、一緒に考えたい方へ
現在、病気や障害、高齢などによって今ある働き方に難しさを感じる本人と家族に向けて、ネット物販の継続サポートを準備しています。
出品方法を説明するだけでなく、どこで手が止まるのかを確認し、販売の進め方と、本人の手元に残るお金を一緒に考える支援です。商品を用意する方法についても、検討を進めています。
ご関心のある方は、お問い合わせの際に「ネット物販の継続サポートについて」とお知らせください。現在困っていることや、取り組んでみたいことをお聞かせください。
福祉・医療関係者向けの、暮らしとお金、仕事づくりに関する講演・研修のご相談も承っています。
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