はじめに
「もう自宅での介護は難しい。」
そう判断したとき、多くの家族は施設入所を考えます。
介護する家族にとっては、一つの区切りです。
本人にとっては、長年暮らした家を離れる決断になります。
そして子どもにとっては、
「いよいよ、その時が来たか。」
そう感じる瞬間でもあります。
施設入所というと、介護施設の費用ばかりが話題になります。
しかし私は、作業療法士、そしてファイナンシャル・プランナーとして関わる中で、お金以上に大きな変化が家族全員に訪れることを何度も見てきました。
「施設に入れば安心」と思っていませんか
施設が決まると、多くのご家族は少し安心します。
「これで介護が落ち着く。」
もちろん、その安心感は大切です。
しかし現実には、新しい生活が始まります。
施設へ入るのは本人一人ですが、
生活が変わるのは家族全員です。
本人は住み慣れた家を離れる。
配偶者は一人暮らしになる。
子どもは親の老いと、これからの人生を現実として受け止めることになります。
施設入所は、介護の終わりではありません。
家族にとって新しい生活の始まりなのです。
配偶者が家に残るのか、空き家になるのか
同じ施設入所でも、その後の暮らしは大きく違います。
配偶者が自宅で暮らし続ける場合。
空き家になる場合。
この違いだけでも、お金の流れは大きく変わります。
空き家になれば、
固定資産税。
火災保険。
建物の管理。
庭木や草刈り。
北海道であれば冬の除雪。
住んでいなくても、家にはお金がかかります。
一方、配偶者が住み続けるのであれば、生活費はこれまでどおり必要です。
「施設の費用だけ考えればいい。」
そんな単純な話ではありません。
年金だけで足りるでしょうか
介護施設を考えるとき、
「年金で何とかなるだろう。」
という言葉を耳にすることがあります。
もちろん年金は大切な収入です。
しかし、施設利用料だけでは生活は成り立ちません。
医療費。
おむつ代。
日用品。
理美容代。
衣類。
そして自宅にかかる費用。
家計全体で考えると、思っていた以上に負担が大きくなることがあります。
私は相談を受けるとき、
年金額だけを見て判断することはありません。
家族全体の生活を一緒に考えます。
子どもに頼るという選択
現実には、子どもが経済的に支える家庭もあります。
毎月数万円を援助する。
施設費の一部を負担する。
入院費を立て替える。
決して珍しい話ではありません。
ただ、その話を家族でできているかというと、そうでもありません。
親は、
「迷惑を掛けたくない。」
子どもは、
「援助したいけれど、自分たちの生活も苦しい。」
住宅ローン。
教育費。
物価高。
子育て。
援助したくても難しい家庭もあります。
だからこそ、お金の問題は家族だけで抱え込まず、早い段階で話し合っておくことが大切なのです。
施設入所は「死」と向き合う時間でもあります
施設へ入るということは、
多くの場合、人生の最終章に入ることを意味します。
本人は、
「もう家へ帰れないかもしれない。」
そう感じるかもしれません。
家族は、
「親と過ごせる時間はあとどれくらいだろう。」
と考えるようになります。
だから施設入所は、お金だけの問題ではありません。
家族の心の整理。
これからの人生。
看取り。
相続。
実家。
お墓。
仏壇。
今まで先送りにしてきたことが、一度に現実になります。
私が一番伝えたいこと
FPとして相談を受けると、
「施設費はいくらですか。」
という質問をいただきます。
もちろん、その答えも大切です。
でも私は、それ以上にお聞きしたいことがあります。
家はどうしますか。
配偶者はこれからどう暮らしますか。
お子さんと話し合えていますか。
親御さんの希望を聞いていますか。
施設入所とは、お金の計算だけでは決められない出来事だからです。
まとめ
施設へ入ることは、介護のゴールではありません。
本人。
配偶者。
子ども。
それぞれが新しい生活を迎える、大きな転機です。
そのとき必要なのは、
施設の費用を調べることだけではありません。
家族で話し合うこと。
これからの暮らしを考えること。
そして、お金の準備をしておくことです。
私はこれまで多くのご家族を見てきました。
その経験から言えるのは、
介護は突然始まりますが、準備は今日から始められるということです。
親が元気な今だからこそ、一度、ご家族で「その先の暮らし」について話してみてはいかがでしょうか。
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