はじめに
「私たちが亡くなったあと、この子は生活していけるのでしょうか。」
発達障害のあるお子さんを持つ親御さんから、最も多く受ける相談です。
しかし、この質問に答える記事は驚くほど少ないのが現状です。
検索すると、
- 発達障害の特徴
- 接し方
- 学校生活
についての記事はたくさん見つかります。
一方で、
「将来のお金」
について具体的に書かれた記事はほとんどありません。
今回は、
作業療法士・ファイナンシャルプランナー・就労継続支援B型事業所運営者として、
「発達障害のある子どもの将来には、実際どれくらいお金が必要なのか」
を具体的に考えてみます。
ケースモデル
今回は、次のようなケースを考えます。
- 小学5年生
- ASD(自閉スペクトラム症)
- 知的障害なし
- 将来は障害者雇用または一般就労を希望
- 親は40歳
決して珍しいケースではありません。
実際によく相談を受ける家庭です。
「1000万円残せば安心ですか?」
親御さんからよく聞かれる質問です。
答えは
「1000万円だけでは判断できません。」
です。
理由は簡単です。
生活は、
貯金だけでは成り立たないからです。
例えば、
- 月収18万円
- 家賃5万円
- 食費3万円
- 光熱費1万2千円
- 通信費5千円
- 日用品1万円
この時点で生活費は約10万円。
ここへ、
医療費
趣味
被服費
交際費
を加えると、
毎月15万円前後になります。
つまり、
働いて収入を得られるかどうかが、
将来を大きく左右します。
高校卒業後が本当のスタート
学校では支援があります。
先生もいます。
しかし卒業すると、
社会は急に厳しくなります。
ここで大切なのは、
進学したかどうかではありません。
生活を維持できるかどうかです。
私は就労継続支援B型事業所を運営していますが、
卒業後に困る人には共通点があります。
それは、
「生活の練習」をしてこなかったこと。
勉強はできる。
でも、
- バスに乗れない
- お金を管理できない
- 約束の時間に行けない
- 困った時に相談できない
こうした力が不足すると、
就職しても続かないことがあります。
発達障害の子どもに本当に残すべきもの
私はFPですが、
最初に考えるのは預金ではありません。
親が残すべきものは、
① 安定した収入
② 住まい
③ 支援者
④ 金銭管理能力
⑤ 困った時に相談できる場所
この5つです。
例えば、
月18万円の給与を20年間得られる人と、
1000万円だけ相続した人。
長期的に見ると、
前者の方が経済的に安定する可能性があります。
「お金の教育」は小学生から始まる
FPとして意外に感じるかもしれませんが、
お金の教育は高校生からでは遅いことがあります。
例えば、
小学生なら、
- コンビニで買い物をする
- お釣りを確認する
- 月500円のお小遣いを管理する
これだけでも立派なお金の教育です。
中学生なら、
交通系ICカードの管理。
高校生なら、
アルバイトや銀行口座。
こうした経験が、
将来の生活力につながります。
親が40代なら、今から始めたいこと
親が40代なら、
まだ時間があります。
だからこそ、
- 地域の相談支援専門員とつながる
- 就労支援を知る
- 障害年金を学ぶ
- グループホームを見学する
- 一人暮らしを想定した生活練習を始める
こうした準備を少しずつ始めることをおすすめします。
「まだ早い」
ではなく、
「今だからできる」
ことがたくさんあります。
福祉特化FPの視点
私は、
発達障害のある子どもの将来は、
「就職できるか」
では決まらないと思っています。
本当に大切なのは、
社会に出たあと40年の暮らしです。
働くこと。
住むこと。
お金を管理すること。
困った時に助けを求められること。
これらを一つのライフプランとして考えることが、
親亡き後の安心につながります。
まとめ
「いくら残せば安心ですか。」
その問いに、金額だけで答えることはできません。
大切なのは、
「お金を残すこと」ではなく、「暮らしが続く仕組みを残すこと」です。
発達障害のある子どもの将来は、親が元気なうちの準備で大きく変わります。
教育、就労、住まい、お金。
それぞれを別々に考えるのではなく、一つの生活として設計していくことが、親子双方の安心につながると私は考えています。


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