札幌まで、吉田拓郎のライブビューイングを観に行きました。
映画館に入って驚いたのは、スクリーンではありません。
客席でした。
杖をついた人。
ゆっくりと席を探す人。
上映中、何度もトイレへ立つ人。
作業療法士という仕事柄、どうしても目が行ってしまいます。
「みんな老人だからねぇ笑」
そう思いました。
でも、それは拓郎だけではありません。
客席も、一緒に年を重ねていたのです。
そして最後。
80歳の拓郎は静かに言いました。
「長生きしようね。」
私は、その一言を聞いて、別のことを考えていました。
老後資金は準備しても、「老後」は準備しているでしょうか。
FPとして相談を受けると、
「老後はいくら必要ですか。」
という質問を受けます。
そのたびに年金を計算し、生活費を計算し、資産を確認します。
もちろん必要なことです。
でも、あの日の映画館で思いました。
老後は、お金だけ準備しても完成しない。
「また行きたい」が、人を生かしている。
あの日、札幌まで来ていた人たちは、おそらく若くありません。
身体も昔のようには動かないでしょう。
それでも来ました。
何時間もかけて。
映画館まで。
たった数時間のために。
それを見て思いました。
人は長生きしたいから生きるのではない。
「次」があるから生きる。
来月のライブ。
来年の旅行。
孫の入学式。
好きな店の新作。
どれでもいい。
「また」がある人は強い。
FPは「お金の計画」を作ります。
でも、本当に必要なのは、
「楽しみの計画」
なのかもしれません。
老後2,000万円問題は話題になります。
でも、
80歳になったとき、
会いたい人はいますか。
出かけたい場所はありますか。
楽しみにしている日はありますか。
ここは誰も計算してくれません。
私は福祉特化FPです。
だから、資産運用の話だけでは終われません。
病院では、
「早く退院したい。」
という人より、
「来月、孫の結婚式がある。」
「秋になったら温泉へ行きたい。」
そう話す人のほうが、不思議と頑張れる場面を何度も見てきました。
人生を支えているのは、お金だけではありません。
“楽しみ”も資産です。
それは金融商品では買えません。
でも、人生には確かに存在します。
映画館を出ると、札幌の街はいつも通りでした。
でも、私の中には一つだけ宿題が残りました。
FPは老後資金を作る仕事です。
しかし、本当に考えなければならないのは、
「長生きする準備」ではなく、「長生きしたくなる人生の準備」なのかもしれません。

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