「電気代が怖くてエアコンを使えない」猛暑の中で考えたい、高齢者とお金の問題

家と生活の関係

8月19日も西日本を中心に危険な暑さが続いています。佐賀県内では最高37℃予想の地域があり、熱中症への厳重な警戒が呼びかけられています。今年の夏は全国的に平年より気温が高いと予想されてきました。

こういう日には、

「我慢せずエアコンを使ってください」

という呼びかけを何度も耳にします。

もちろん、その通りです。

厚生労働省も、屋内ではエアコンなどで温度を調節し、室温をこまめに確認するよう呼びかけています。特に高齢者は、暑さや水分不足を感じる機能や体温調節機能が低下しており、熱中症患者のおよそ半数が65歳以上です。

でも、福祉特化FPとして考えると、そこで一つ引っかかります。

「電気代がもったいないから、エアコンを使いたくない」という人には、どう伝えればいいのでしょうか。

単に「命の方が大事でしょう」と言えば済む問題なのか。

私は、そうは思いません。

高齢者の家計には、もともと余裕があるとは限らない

総務省の2025年家計調査を見ると、65歳以上の単身無職世帯では、月平均の実収入が13万1,456円、可処分所得が11万8,465円でした。

それに対して消費支出は14万8,445円。

平均すると、可処分所得より消費支出の方が月約3万円多い状態です。

もちろん、これは平均値です。

貯蓄を十分に持っている人もいますし、すべての高齢者が生活に困っているという意味ではありません。

ただ、

食料品が高くなった。

電気代も気になる。

医療費もかかる。

年金収入は限られている。

そんな人に、

「暑い日は一日中エアコンを使いましょう」

と言ったとき、

「電気代はいくらになるんだろう」

と心配すること自体は、決して不自然ではないと思います。

エアコンの電気代はいくらかかる?

ここは「1か月○円」と一つの数字を出すのは危険です。

エアコンの電気代は、機種、部屋の広さ、断熱性能、外気温、設定温度、使用時間などによって大きく変わるからです。

資源エネルギー庁も、家庭でできる省エネとして、冷房設定温度を無理のない範囲で上げることや、必要な時間に使用すること、フィルターを月1~2回清掃することなどを紹介しています。

例えば2.2kWのエアコンについて、外気温31℃、1日9時間使用という条件では、設定温度を27℃から1℃上げることで年間約940円、フィルター清掃で年間約990円の節約になるという試算があります。

ただ、ここで注意したいことがあります。

熱中症になるほど我慢して節電することは、省エネとは違います。

厚生労働省も以前から、節電を意識するあまり健康を害さないよう、気温や湿度が高い日は無理に我慢せずエアコンを使うよう呼びかけています。

節約できるところは節約する。

でも、必要な冷房まで切らない。

この線引きが大切です。

「エアコンをつけっぱなしにするのは贅沢」という感覚

今の高齢世代には、エアコンが当たり前ではなかった時代を長く生きてきた人もいます。

「昔はエアコンなんかなかった」

「これくらいの暑さなら大丈夫」

「一人しかいないのにエアコンを使うのはもったいない」

そう考える人もいるでしょう。

しかし、現在の暑さの中では、その感覚だけで判断するのは危険です。

厚生労働省によれば、高齢者は暑さそのものを感じにくくなり、発汗などの体温調節機能も低下します。さらに、のどの渇きも感じにくくなります。

つまり、

「本人が暑くないと言っている」=「安全」ではありません。

ここは、お金の問題と身体の問題が重なるところです。

電気代を節約して、医療費がかかったら何をしているのか

FPとして家計を見るなら、私はここも考えます。

仮にエアコンを控えることで数千円の電気代を節約できたとしても、その結果、熱中症になって救急搬送され、入院することになったらどうでしょう。

今年も7月27日から8月2日のわずか1週間で、全国の熱中症による救急搬送は9,180人に上っています。

もちろん、

「エアコンを使えば絶対に熱中症にならない」

という話ではありません。

でも、数千円を節約するために健康を大きく損なうリスクを上げてしまうなら、それは家計管理としても本末転倒です。

節約とは、お金を使わないことではありません。

必要なところには使い、削っても生活を壊さないところを削る。

私は、それが家計管理だと思っています。

では、本当にお金がなくてエアコンを使えない人は?

ここからが、今回一番書きたかったところです。

「エアコンを使った方がいいのは分かっている。でも、本当にお金がない」

という人もいます。

そういう人に、

「命に関わりますから使ってください」

と言うだけでは、問題は解決しません。

特に生活保護を利用している場合について調べてみると、意外と知られていない制度があります。

生活保護では原則として、エアコンなどの日常生活用品は毎月の保護費の中から購入することになっています。

ところが一定の場合には、エアコン購入費が一時扶助として認められることがあります。

厚生労働省の実施要領では、保護開始時に冷房器具を持っていないなど一定の条件に該当し、熱中症予防が特に必要な人がいて、やむを得ないと認められる場合、7万8,000円の範囲内で冷房器具の購入費を認定できるとされています。

対象となり得るのは、保護開始時だけではありません。

長期入院・入所から退院・退所して新たに単身生活を始める場合、災害でエアコンを失った場合、転居によって現在所有しているエアコンが使えなくなった場合なども対象になり得ます。

これは知っているかどうかでかなり違います。

ただし「生活保護ならエアコン代が出る」ではない

ここは誤解しないでください。

生活保護を受けていれば、誰でも新しいエアコンを買ってもらえる制度ではありません。

一定の要件があります。

また、既にエアコンを持っていて故障した場合などは、原則として毎月の保護費をやりくりして購入することが基本とされています。

必要に応じて生活福祉資金貸付制度などを利用する方法も示されています。

さらに厚生労働省は2026年3月の資料でも、生活保護世帯のエアコン購入費の取扱いを改めて自治体に周知するとともに、物価高対策の地方交付金を使った低所得世帯へのエアコン購入支援などの活用を促しています。

つまり、生活保護ではない低所得世帯についても、自治体独自の支援が行われる可能性があります。

「お金がないから買えない」で終わらず、まず住んでいる自治体に確認してみる価値があります。

「エアコンを使えない」と「エアコンがない」は別の問題

もう一つ分けて考えたいことがあります。

エアコンはある。でも電気代が怖くて使わない。

そして、

そもそもエアコンを持っていない。

この二つは必要な支援が違います。

前者なら、家計全体を見直して冷房費を確保できないか考える。

後者なら、購入支援や貸付制度が使えないか確認する。

そして故障しているなら修理や買い替えを考える。

「エアコンを使いましょう」という一言だけでは、そこまで分かりません。

家族ができるのは「エアコンつけてね」と言うことだけではない

離れて暮らす高齢の親がいる家庭なら、夏になるたび、

「ちゃんとエアコンつけてる?」

と電話している人もいるでしょう。

それも大切です。

でも、お金のことまで一歩踏み込んでみてもいいと思います。

「電気代を気にしてない?」

「エアコン壊れてない?」

「今月の電気代、どのくらいだった?」

そんな話をしてみる。

本人が「もったいない」と言っている背景に、

単なる習慣があるのか。

本当に家計が苦しいのか。

そこを分けて考える必要があります。

家計が本当に厳しいなら、家族だけで解決しなくてもいい。

自治体、地域包括支援センター、福祉事務所などにつなぐことで利用できる制度が見つかる可能性があります。

「節約してください」と「エアコンを使ってください」の間で

私たちは日頃、

「老後に備えて節約しましょう」

「無駄な支出を減らしましょう」

と言われます。

その一方、猛暑になれば、

「命を守るためにエアコンを使ってください」

と言われます。

どちらも間違っていません。

だからこそ、FPとして大事なのは何でも節約することではなく、お金を使う優先順位を考えることだと思います。

食費を削りすぎる。

必要な受診を控える。

真夏に冷房を我慢する。

これは、家計を守っているように見えて、生活そのものを危険にする節約です。

一方で、設定温度を無理のない範囲で調整する、フィルターを掃除する、日差しを遮るなど、お金をほとんど使わずできる工夫もあります。

削っていいお金と、削ってはいけないお金がある。

猛暑日のエアコン代は、後者に近いのではないでしょうか。

「電気代がもったいない」で終わらせない

高齢者がエアコンを使わないという話を聞くと、

「頑固だから」

「昔の人だから」

「何度言っても聞かない」

で終わらせてしまいがちです。

でも、その背景にお金の不安があるなら、それは本人の意識だけの問題ではありません。

2025年の家計調査では、65歳以上の単身無職世帯の平均的な家計は、可処分所得だけでは消費支出を賄えていませんでした。

その中で電気代が増えることを怖いと思う人がいるのは、理解できる話です。

だから必要なのは、

「我慢しないで使って」だけではなく、「安心して使うために、お金の問題をどうするか」まで一緒に考えること。

熱中症は健康の問題です。

しかし、その予防にお金が必要になる以上、家計の問題でもあります。

命を守るために必要なお金まで削らなくて済むようにする。

それも、福祉とお金を一緒に考える意味の一つだと思っています。


福祉特化FPとして、暮らしとお金の相談をお受けしています

介護、障害、年金、生活費など、福祉の問題はお金と切り離して考えることができません。

「制度があるのは知っているけれど、自分の場合はどうなのか分からない」「親の生活費や介護費について一度整理したい」といったご相談もお受けしています。

作業療法士としての経験、福祉事業所を運営する立場、FPとしての視点から、制度だけでなく、その人が実際にどう暮らしていくのかまで含めて一緒に整理します。

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