障害年金で一人暮らしするなら家賃はいくらまで?生活費から考える現実的な金額

家と生活の関係

「障害年金で一人暮らしをしたい。でも家賃はいくらまでなら払えるのだろう」

前回、障害年金を受給しているからといって、賃貸住宅を借りられないわけではないという話を書きました。

ただ、審査に通ることと、その部屋で生活を続けられることは別です。

今回はさらに一歩進めて、

障害年金で一人暮らしをする場合、家賃はいくらまでなら現実的なのか。

実際の年金額と生活費から考えてみます。

先に結論を言ってしまうと、私は障害年金で暮らす人に対して、単純に**「家賃は収入の3分の1まで」**とは言えません。

障害のある人の場合、医療費、交通費、福祉サービス、働ける量なども一人ひとり違うからです。

そしてもう一つ。

同じ3万円の家賃でも、どこに住むかによって生活費は変わります。

ここまで考えることが、これからの住まい選びには必要だと思っています。

2026年度の障害基礎年金はいくら?

まず基準になる障害年金を確認してみます。

2026年度(令和8年度)の障害基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの場合、

1級 年額1,059,125円
2級 年額847,300円

です。

月額に直すと、およそ、

1級 月88,260円
2級 月70,608円

です。

もちろん障害厚生年金を受給している人、子の加算がある人などは金額が変わります。

今回は話を分かりやすくするため、単身で障害基礎年金2級を受給している人を中心に考えてみます。

月約7万600円。

さて、この金額で家賃を払って一人暮らしをするとしたら、家賃はいくらまでにすればいいのでしょうか。

「家賃は収入の3分の1」で計算すると約2万3500円

よく言われる、

「家賃は収入の3分の1」

をそのまま当てはめると、

70,608円 ÷ 3 = 約23,500円

です。

かなり低い金額になります。

では家賃3万円ならどうでしょう。

障害基礎年金2級70,608円から3万円を引けば、

残り40,608円。

この約4万円から食費、光熱水費、通信費、日用品、医療費、交通費などを払うことになります。

家賃4万円なら、

残り30,608円。

家賃5万円なら、

残り20,608円。

こうやって数字にすると、かなり厳しいことが分かります。

一人暮らしには家賃以外にもこれだけのお金がかかる

総務省の家計調査を見ると、2025年の65歳以上の単身無職世帯でも、1か月の消費支出は平均148,445円でした。

もちろん高齢者の平均値なので、障害のある若年・中年層にそのまま当てはめることはできません。

別の総務省統計でも、単身世帯の支出には食料、住居、光熱・水道、交通・通信、保健医療などさまざまな費用が含まれています。

つまり、

「家賃さえ払えれば一人暮らしできる」わけではありません。

ここを忘れてはいけません。

障害基礎年金2級だけで生活するモデルを作ってみる

かなり節約した生活を仮定してみます。

例えば、

支出月額
家賃30,000円
食費25,000円
光熱水費10,000円
通信費5,000円
日用品3,000円
医療費3,000円
交通費3,000円
合計79,000円

これでも月8,000円以上足りません。

しかも、

衣類を買う。

家電が壊れる。

冠婚葬祭がある。

冬の暖房費が増える。

歯科治療が必要になる。

といった臨時支出をほとんど考えていません。

ですから、

障害基礎年金2級だけで民間賃貸住宅に一人暮らしするのは、家賃をかなり抑えても簡単ではない。

ここは現実として伝えておく必要があると思います。

障害年金+B型工賃ならどうなる?

では、就労継続支援B型で働いている場合はどうでしょう。

厚生労働省による令和6年度のB型平均工賃月額は、全国平均で24,141円とされています。

※平均工賃は算定方法の変更も行われているため、過年度との単純比較には注意が必要です。

単純なモデルとして、

障害基礎年金2級 約70,600円

B型工賃 約24,100円

なら、

月約94,700円

になります。

家賃3万円なら残り約64,700円。

先ほどよりかなり違います。

ただし、それでも余裕のある生活とは言えません。

そしてB型の工賃には事業所や地域によって大きな差があります。

北海道の令和6年度平均は27,361円ですが、都道府県によって2万円前後から3万円程度まで幅があります。

だから、

「障害年金+B型なら家賃○万円まで」

とも一律には言えません。

本人の実際の工賃で計算する必要があります。

家賃3万円と4万円。その1万円は大きい

月収10万円前後の生活では、家賃の1万円差は非常に大きいです。

年間なら12万円。

だから、

「できるだけ安い部屋を探そう」

となります。

これは当然です。

でも私は、ここで家賃だけを見ない方がいいと思っています。

例えば、

家賃3万円の部屋

スーパーまで2km。
病院まで3km。
バスは1時間に1本。
冬は積雪が多い。

家賃4万円の部屋

スーパーまで300m。
病院まで800m。
バス停まで100m。
日常生活の多くが徒歩圏内。

車を運転できない人なら、どちらが安いでしょう。

家賃だけなら3万円です。

しかし毎週の買い物や通院にタクシーを使えば、簡単に数千円、場合によっては1万円以上かかります。

すると、

「家賃が安い部屋」が「生活費の安い部屋」とは限らなくなります。

障害があると、さらに「場所」の影響が大きくなる

私は作業療法士としても、この部分はかなり重要だと思っています。

例えば片麻痺がある。

長距離歩行が難しい。

車椅子を使用している。

精神疾患があり、定期的な通院が必要。

公共交通を一人で利用することが難しい。

こうした条件があれば、住宅からスーパー、病院、福祉サービス、職場までの距離は生活そのものに影響します。

月5,000円家賃を下げるために生活圏から離れてしまい、交通費が月8,000円増えたら意味がありません。

だから私は、

「家賃はいくらまで?」だけでは不十分

だと思っています。

考えるべきなのは、

家賃+その場所で生活するために必要なお金

です。

家賃ではなく「住居関連費」で考えてみる

例えば住まいに関係する費用を、

家賃
+共益費
+保証料
+暖房費
+移動費

まで含めて考える。

これなら、かなり現実に近づきます。

北海道なら特に暖房費は無視できません。

古くて家賃の安い住宅でも、断熱性能が低く冬の暖房費が高ければ、本当に安い住宅なのか分かりません。

逆に家賃が多少高くても、

断熱性能が高い。

スーパーが近い。

病院が近い。

公共交通が使いやすい。

という住宅なら、生活全体では安くなる可能性があります。

不動産の価格と、暮らすためのコストは別物です。

同じ障害年金でも「どこに住むか」で生活は変わる

ここから、もう少し大きな話になります。

障害基礎年金2級の金額は、基本的に住んでいる地域によって変わるものではありません。

東京に住んでも、北海道に住んでも、年金額そのものが地域の家賃に合わせて変わるわけではありません。

ところが住宅費は大きく違います。

だから、

収入を増やすことだけではなく、生活費の低い地域へ住み替える

という選択肢も出てきます。

もちろん、

「地方なら家賃が安いから移住すればいい」

という単純な話ではありません。

地方では車が必要な地域もあります。

病院が遠い地域もあります。

福祉サービスが少ない地域もあります。

仕事の選択肢も変わります。

だからこそ、

家賃だけではなく、その地域で生活そのものが成立するかを調べる必要があります。

「障害年金で暮らせる街」という考え方

私はこれから、

障害年金や限られた収入でも、無理なく暮らせる場所はどこなのか

という視点をもっと掘り下げてみたいと思っています。

家賃が安い。

スーパーが近い。

医療機関がある。

公共交通がある。

福祉サービスを利用できる。

働く場所がある。

そして、その人の身体機能や障害特性でも移動できる。

こうした条件を重ねていけば、

単なる、

「安い物件ランキング」

とはまったく違う住まい探しになります。

これはFPだけでも、不動産だけでも、福祉だけでも十分ではありません。

お金と住まいと生活を一緒に見る必要があります。

結局、家賃はいくらまでがいいのか

ここまで読んで、

「結局いくらなの?」

と思った人もいるでしょう。

障害基礎年金2級だけなら、月約70,600円です。

この収入だけで民間賃貸住宅に一人暮らしするなら、私は家賃3万円でも決して楽ではないと考えます。

2万円台の住宅を見つけられれば家計には余裕が出ますが、今度はその住宅で生活できるかという問題があります。

障害年金に給与や工賃など別の収入があるなら、選択肢は広がります。

だから、

「障害年金だから家賃は○万円」では決められません。

見るべきなのは、

収入-家賃=残金

ではなく、

収入-「その場所で暮らすための総費用」

です。

ここまで計算して初めて、その住宅が本当に「安い」のかが分かります。

自分に合った場所で暮らすために

障害のある人の一人暮らしを考えるとき、

「障害年金で暮らせるか」

だけを考えるのではなく、

どこなら、その収入で暮らせるのか。

という視点もあっていいと思います。

今住んでいる地域で家賃を下げる。

公営住宅などを検討する。

仕事による収入を組み合わせる。

家族との距離を考える。

そして場合によっては、別の地域へ住み替える。

選択肢はいくつもあります。

大切なのは、安い住宅を見つけることではありません。

その人が、その場所で生活を続けられる住宅を見つけることです。

私はこれから、福祉特化FPとして「お金」だけではなく、住まいと生活圏まで含めてこの問題を考えていきます。

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障害のある人の「お金と住まい」の相談について

障害年金、給与や工賃、生活費、家賃などから、一人暮らしが現実的に可能なのかを一緒に整理します。

単純な家計計算だけではなく、作業療法士として、通院・買い物・交通・福祉サービスなどを含めた**「その場所で暮らせるか」**という視点も大切にしています。

一人暮らし、住み替え、親亡き後の住まい、将来的な地方移住などについても、今後さらに取り組んでいきます。

福祉・障害・お金・住まいをテーマとした講演・研修についてもご相談ください。

参考資料

日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」

総務省統計局「家計調査年報 2025年」

厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」

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