最近、AIを使うことが珍しくなくなりました。
文章を書く。調べものをする。旅行の計画を立てる。仕事の資料を作る。
そして、お金についてもAIに相談できます。
「老後資金はいくら必要?」
「この保険は必要?」
「NISAはいくら積み立てればいい?」
少し条件を加えれば、
「障害年金を受給しながら働いたらどうなる?」
「親が要介護になった。これからいくら必要?」
「障害年金だけで一人暮らしできる?」
といった質問にも答えてくれます。
それも24時間、ほとんどお金をかけず、何回聞き直しても構いません。
ここまで来ると、FPである私自身、考えざるを得ません。
これからも人間のFPは必要なのでしょうか。
私は、かなりの部分でAIに置き換わると思っています。
ただ、福祉の現場にいると、それだけでは終わらないとも感じています。
金融の世界では、すでにAIは「未来の話」ではない
金融機関でのAI利用は、すでにかなり進んでいます。
金融庁が金融機関など130社へのアンケート等をもとにまとめた資料では、回答した金融機関等の9割以上が従来型AIまたは生成AIを何らかの形で活用していました。
生成AIについても、7割以上が文章作成、翻訳、要約などに導入しています。
金融庁自身もAIチャットボットを設置しています。
2026年1月から3月だけで2,188人が利用しており、そのうち約半分は相談室の受付時間外でした。
これはAIの強みをよく表しています。
夜中でも聞ける。
休日でも聞ける。
「こんなことを聞いたら恥ずかしい」と考えなくてもいい。
人に相談することへのハードルが高い人にとって、これはかなり大きな変化だと思います。
「制度を説明するFP」の価値は下がると思う
私はFPなので、あえて厳しく考えてみます。
例えば、
「NISAとは何ですか?」
「高額療養費制度とは?」
「障害年金の受給要件は?」
「介護保険では何が使えますか?」
こうした質問に対して、制度を説明するだけなら、今後AIはさらに強くなるでしょう。
これまでは専門家が知識を持っていること自体に価値がありました。
でもAIなら、大量の情報から必要なものを探し、短時間で整理できます。
計算もできます。
難しい文章を簡単に説明することもできます。
制度について質問するためだけに、わざわざ予約を取り、お金を払ってFPに相談する必要性は確実に小さくなると思います。
これはFPだけの問題ではないでしょう。
「知っていること」が仕事だった専門職は、AIによって仕事の中身を問われることになると思います。
ところが、金融機関自身もAIに全部任せてはいない
興味深いのはここです。
これだけAIを導入している金融機関でも、生成AIを顧客向けサービスに使う場合には慎重です。
金融庁の調査では、AIがもっともらしい誤情報を作る「ハルシネーション」などを警戒して、AIの回答をそのまま顧客へ提示せず、人間の判断を介在させるケースが大半でした。
実際、すでに問題も起きています。
2026年6月の金融庁の会議資料では、利用者が生成AIを使って金融トラブルについて調べるケースが報告されています。
AIによって問題点や取引経緯を整理してから相談することで、相談がスムーズになった例がある一方、AIの誤った情報をもとに、本来対象ではない機関へ相談してしまうケースなども出ています。
つまりAIは、
相談するための強力な道具にはなる。
でも、
AIが言ったから正しい、とは限らない。
すでに現実の金融相談で、この両方が起きています。
福祉のお金は「条件を一つ変える」と答えが変わる
ここからが、福祉特化FPとして一番気になるところです。
例えば、
「障害年金だけで一人暮らしできますか?」
とAIに聞いたとします。
家賃5万円。
食費3万円。
水道光熱費1万5,000円。
通信費8,000円。
こうした数字を並べて、収支を計算することはできます。
でも実際の生活では、そんなに単純ではありません。
その人は働けるのか。
どの程度働けるのか。
障害福祉サービスを利用しているのか。
一人で金銭管理できるのか。
通院にどのくらいお金がかかるのか。
家族から援助を受けられるのか。
どこに住むのか。
グループホームという選択肢はどうなのか。
本人は、そもそもどんな生活を望んでいるのか。
同じ障害年金2級でも、生活は一人ひとり違います。
数字だけなら計算できます。
でも、その数字がその人の生活で成立するかどうかは別の話です。
親の介護も「平均○万円」では決められない
介護についても同じです。
「親の介護にはいくら必要ですか?」
AIに聞けば、統計から平均的な費用を調べることはできます。
それ自体は役に立ちます。
でも現実には、
在宅なのか。
施設なのか。
持ち家なのか。
賃貸なのか。
子どもは近くにいるのか。
遠方なのか。
親の年金はいくらなのか。
認知症はあるのか。
家族がどこまで介護できるのか。
仕事を休む必要があるのか。
これによって家計は全く違います。
以前、私は家族がかなり高額な自費サービスを使いながら、遠方に住む親の生活を支えていたケースを見たことがあります。
一般的な「介護費用の平均」から考えても、その家庭の答えは出ません。
福祉のお金には、家計簿だけでは見えない生活条件があります。
ここが一般的な金融相談とは少し違うところだと思っています。
AIに相談するとき、もう一つ気をつけたいこと
福祉の相談では、AIへ入力する情報にも注意が必要です。
家計相談を詳しくしようとすると、
収入。
預貯金。
病歴。
障害。
家族構成。
保険。
借金。
勤務先。
介護状態。
どんどん個人的な情報を入力したくなります。
でも、詳しい回答を得るために何でも入力すればいいわけではありません。
利用するAIサービスが入力データをどう扱うのか確認し、個人を特定できる情報や必要以上にセンシティブな情報を入力しない。
これは最低限意識しておきたいところです。
金融庁も金融機関による生成AI利用の課題として、正確性だけでなく、個人情報保護、情報セキュリティなどを挙げています。
便利になるほど、使う側にも知識が必要になります。
それでも私は、福祉分野こそAIを使った方がいいと思う
ここまで読むと、
「やっぱりAIにお金の相談をするのは危ない」
と思うかもしれません。
私は逆です。
福祉分野こそ、AIをもっと使える可能性があると思っています。
福祉制度は、とにかく複雑です。
障害年金。
介護保険。
障害福祉サービス。
生活保護。
医療費助成。
成年後見。
就労支援。
自治体独自の制度。
必要な情報が役所、年金事務所、ハローワーク、社会福祉協議会などに分かれています。
「何を調べればいいのか分からない」
というところで止まってしまう人もいます。
そんなときAIに、
「親が認知症になりました。最初に確認した方がいい制度を教えてください」
と聞けば、相談先や確認すべき制度の候補を整理することができます。
そのうえで、
「地域包括支援センターでは何を聞けばいい?」
「役所へ持っていくものを整理して」
「相談するときに説明する内容を箇条書きにして」
と使う。
これはかなり便利です。
金融トラブルの相談でも、AIで時系列や論点を整理してから相談することで、相談員が事実関係を把握しやすくなった事例が実際に報告されています。
AIに全部決めてもらうのではなく、人に相談する前の整理役として使う。
福祉では、この使い方がかなり有効なのではないでしょうか。
むしろ心配なのは「AIを使える人」と「使えない人」の差
一方で、私は別の問題も気になります。
AIによって情報へのアクセスが劇的に楽になるほど、
AIを使える人と使えない人との差が広がる可能性があります。
同じ制度を知らない二人がいても、
一人はAIに質問して制度を見つけ、役所へ行く前に必要なことまで整理できる。
もう一人は、どこへ相談すればいいか分からないままになる。
福祉制度は、本来必要な人に届くためのものです。
それなのに、デジタル機器を使えるかどうか、質問を組み立てられるかどうかによって、制度へのたどり着きやすさまで変わるとしたら、新しい情報格差が生まれます。
高齢者だけの問題でもありません。
障害特性によって、文字入力や情報の取捨選択が難しい人もいます。
経済的な事情で利用できる端末や通信環境に差がある人もいます。
AIが福祉を便利にするほど、「使えない人をどうするか」も同時に考えなければならない。
ここは今後かなり大きな課題になると思います。
では、人間のFPには何が残るのか
ここまで考えると、私はむしろFPの仕事がはっきりしてくるように思います。
制度を説明するだけならAIに任せればいい。
一般的な計算もAIに任せればいい。
情報収集にも使えばいい。
その代わり人間は、
「この人は実際にどう暮らすのか」
を見る。
障害年金が月いくらかという知識だけではなく、その金額でこの人がどこに住み、どう働き、どんな支援を使えば生活できるのかを考える。
介護費用の平均額を示すだけではなく、親と子の距離、仕事、住宅、本人の希望まで含めて考える。
制度上「利用できます」で終わらず、本当にその制度までたどり着けるのかを見る。
私は、福祉特化FPとして価値が残るとすれば、そこだと思っています。
AIに仕事を奪われるのではなく、仕事の中身を問われる
AIの進化を見て、
「FPの仕事がなくなる」
と考えることもできます。
私は少し違います。
AIでできる仕事に、お金を払ってもらえなくなる。
そう考えた方が近い気がします。
制度を説明する。
検索すれば出てくる情報を伝える。
簡単な計算をする。
その価値は確実に下がっていくでしょう。
だったら、人間にしかできないところへ行くしかありません。
そして福祉の世界には、まだそこがたくさんあります。
数字だけでは決まらない生活があります。
制度だけでは解決しない家族の事情があります。
正解が一つではない選択があります。
AIは、その選択肢を探す強力な道具になる。
でも最後に、
「この人はどう暮らしたいのか」
まで一緒に考える。
少なくとも今の私は、そこまでAIに丸投げしようとは思いません。
むしろAIが進化すればするほど、FPにも福祉職にも、知識を持っていることではなく、その知識をどう生活につなげるのかが問われるようになるのではないでしょうか。
福祉特化FPとして、暮らしとお金の相談をお受けしています
障害年金、介護費用、親亡き後、一人暮らし、働き方など、福祉のお金は制度だけを調べても答えが出ないことがあります。
福祉特化FPとして、制度や家計だけでなく、住まい・仕事・家族・福祉サービスまで含めた生活全体から一緒に整理します。
「AIで調べてみたけれど、自分の場合が分からない」という相談でも構いません。
講演・研修についても、福祉とお金に加え、**「AI時代の福祉と情報格差」「AI時代に専門職へ求められること」**といったテーマまで扱えます。
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