はじめに
「親亡き後問題」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
障害のある子どもを持つ親にとって、
「自分がいなくなった後、この子はどう暮らしていくのだろう」
という不安は避けて通れません。
しかし実際には、
親亡き後問題は親が亡くなった時に始まる問題ではありません。
多くの場合、
親が高齢になり始めた時点で少しずつ始まっています。
この記事では、作業療法士、FP、宅建士、就労継続支援B型事業所運営という立場から、親亡き後問題をどのように考えるべきかを整理していきます。
親亡き後問題とは何か
親亡き後問題というと、
相続
遺言
成年後見
といった法律やお金の問題が注目されがちです。
もちろん重要です。
しかし現場で見ていると、本当に困るのは別の部分です。
例えば、
- 誰が金銭管理をするのか
- どこに住むのか
- 日中どこで過ごすのか
- 体調を崩した時に誰が支援するのか
- 緊急時に連絡できる人がいるのか
といった生活そのものです。
親亡き後問題とは、
お金の問題ではなく「生活の継続」の問題なのです。
日本では何が起きているのか
日本の障害者数は約1,164万人と推計されています。
人口の約9%に相当します。
また障害のある方の高齢化も進んでいます。
親世代が80代になり、
子ども世代が50代、60代になるケースも珍しくありません。
いわゆる8050問題が社会問題として取り上げられていますが、障害福祉の現場では以前から存在していた課題です。
親が支援できなくなる一方で、
子どもも高齢化し、
新しい環境への適応が難しくなる。
ここに親亡き後問題の難しさがあります。
「何歳から考えるべきか」の答え
結論から言うと、
親亡き後問題は50代から考えるべきではありません。
60代からでもありません。
本当は障害が分かった時から少しずつ考えるべき問題です。
ただし現実的には、
親が60歳を超えたら具体的な準備を始めることをおすすめします。
なぜなら、
親自身の健康問題が現実味を帯びてくるからです。
平均寿命は伸びています。
しかし健康寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あります。
「生きていること」と
「支援できること」
は同じではありません。
私が現場で見た間に合った家族
うまく準備できていた家族には共通点があります。
それは、
親以外との関係を早くから作っていたことです。
- グループホームを見学している
- 相談支援専門員とつながっている
- 日中活動の場がある
- 兄弟姉妹と話し合っている
こうした家族は、親が高齢になっても慌てません。
生活の一部がすでに地域へ移行しているからです。
間に合わなかった家族
一方で、
親がすべてを抱え込んでいたケースもあります。
- 通院も親
- お金の管理も親
- 送迎も親
- 手続きも親
という状態です。
親が入院した瞬間に生活が止まってしまいます。
これは決して珍しい話ではありません。
むしろ現場ではよく見られます。
親が元気なうちに準備したい5つのこと
① 住まい
グループホームなのか
一人暮らしなのか
家族との同居なのか
早めに選択肢を知ることが重要です。
② お金
障害年金
工賃
給与
親の資産
保険
相続
全体像を把握します。
③ 支援者
相談支援専門員
ヘルパー
事業所
医療機関
地域との接点を増やします。
④ 日中活動
働く場所
通う場所
役割を持てる場所を作ります。
⑤ 法的な準備
遺言
成年後見
家族信託
必要な制度を理解しておきます。
実は一番大事なのはお金ではない
FPとして活動していると、
お金の相談を受けることがあります。
しかし現場では、
お金があっても孤立してしまう人を見ます。
逆に、
大きな資産がなくても、
支援者や居場所があり安定して暮らしている人もいます。
生活を支えるのは財産だけではありません。
住まい
人とのつながり
役割
支援体制
これらを含めて準備することが重要です。
まとめ
親亡き後問題は、親が亡くなった時に始まる問題ではありません。
親が元気なうちから少しずつ準備を進めることで、多くの不安は軽減できます。
そして最も大切なのは、
「親がいなくても生活が回る仕組み」
を作ることです。
そのためには、
住まい
お金
支援者
日中活動
法的な準備
を一体として考える必要があります。
親亡き後問題は相続対策ではありません。
生活設計の問題なのです。


コメント