親の介護で仕事を休むとき、どうする?介護休暇・介護休業と「辞める前」に知ってほしいこと

介護と仕事

親の介護のために、仕事を休まなければならない。

これは決して珍しい話ではありません。

通院への付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせ、離れて暮らす親の様子を見るための帰省。

介護というと、「食事を手伝う」「入浴を介助する」といった直接的な介助を想像しがちですが、家族が仕事を休まなければならない場面は、それだけではありません。

そして私は、福祉に携わる一方で、事業所を経営し、人を雇う立場でもあります。

だからこの問題を見るとき、

「介護なんだから会社は休ませるべきだ」

だけでは済まないと思っています。

働く人には親を支えなければならない事情がある。

会社には仕事を回さなければならない事情がある。

では、その間をどうつなげればいいのでしょうか。

親の介護で使える「介護休暇」と「介護休業」は違う

まず知っておきたいのが、この二つです。

名前が似ていますが、使い方はかなり違います。

介護休暇

介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得できる休暇です。

対象家族が1人なら年5日まで、2人以上なら年10日まで。1日単位だけでなく、時間単位でも取得できます。

そして大事なのが、

直接介護する日だけの制度ではない

ということです。

厚生労働省も、通院の付き添いや介護サービスを受けるための手続きの代行、ケアマネジャーとの打ち合わせなどに利用できると案内しています。

「今日は親の病院だから」

「介護サービスの手続きをしなければならない」

そんな場面で使える制度です。

なお、介護休暇を有給とするか無給とするかは会社の規定によります。

ここは通常の年次有給休暇と混同しないようにしたいところです。

介護休業

こちらは、もっとまとまった期間を確保する制度です。

対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。

ただし、この93日について非常に重要なことがあります。

厚生労働省は介護休業を、

家族を自分一人で介護し続けるための93日間ではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間

として活用することを勧めています。

地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談する。

介護サービスを手配する。

家族で役割を決める。

今後の生活を組み立てる。

そのための時間です。

一定の要件を満たせば、雇用保険から休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金を受けられる場合もあります。

「親の様子を見に行くため毎月休む」という現実

私が経営する事業所にも、離れて暮らす親の様子を見るため、定期的に仕事を休んで出向いている職員がいます。

親は気軽に行き来できる距離には住んでいません。

そのため、様子を見に行くだけでも一日仕事になります。

ここで私は、二つの立場になります。

一つは福祉に携わる人間としての立場。

親の状態が心配であれば、家族として行かなければならないことは理解できます。

もう一つは、経営者としての立場です。

一人休めば、その日の仕事は誰かが代わらなければなりません。

小さな事業所なら、一人の欠勤が与える影響は決して小さくありません。

これは綺麗事だけでは済みません。

それでも私は、

普段の勤務についての評価と、家族の介護のために必要な休みについては、分けて考える必要がある

と思っています。

介護を理由に休むことまで勤務態度の問題としてしまえば、働く人は会社に介護について言えなくなってしまいます。

実は会社側にも義務が増えている

この問題は、もう「理解のある会社なら対応する」という段階ではありません。

2025年4月から改正育児・介護休業法が施行され、介護離職を防止するため、企業には介護休業などを利用しやすい雇用環境を整備することが義務付けられました。

さらに、労働者から介護に直面したと申し出があった場合、会社は制度について個別に周知し、利用する意向を確認することも必要になっています。

つまり経営者側も、

「家庭のことだから自分で何とかしてください」

では済まなくなっています。

私自身、人を雇う立場だからこそ、これは他人事ではありません。

でも「介護だからいつでも休んでいい」でもない

一方で、働く側にも考えてほしいことがあります。

介護休暇や介護休業にはルールがあります。

会社にも仕事があります。

特に小規模な会社では、一人が突然休むことで他の職員に負担がかかることもあります。

だからこそ、

介護が始まってから毎回その場しのぎで休む

状態にしないことが重要だと思います。

親の状態が変わってきたら、早めに会社へ伝える。

どのくらいの頻度で休む可能性があるのか相談する。

介護休暇、有給休暇、介護休業などをどう使うのか確認する。

介護サービスを使って、家族が行かなければならない回数を減らせないか考える。

「家族が全部やる」から抜け出すことが、仕事を続けるためには必要です。

介護のために仕事を辞める前に考えてほしい

介護が大変になると、

「もう仕事を辞めるしかない」

と思うことがあります。

でも、ここでFPとして考えてほしいのがお金です。

仕事を辞めれば、当然ながら給与収入がなくなります。

しかも介護は、いつまで続くか分かりません。

親の介護費用が増えている時期に、介護する子どもの収入まで減ってしまう。

これは家計にとってかなり厳しい組み合わせです。

さらに50代、60代で離職すれば、その後の再就職や自分自身の老後資金にも影響します。

だから私は、

介護離職を決める前に、使える制度を全部確認してほしい

と思っています。

介護休暇。

介護休業。

年次有給休暇。

短時間勤務など会社の両立支援制度。

介護保険サービス。

そして家族の分担。

これらを使っても両立できないのかを確認してからでも、退職を考えるのは遅くありません。

「会社か親か」の二択にしないために

介護と仕事の問題を考えていると、どうしても、

親を取るのか。仕事を取るのか。

という話になりがちです。

でも、本来はその二択に追い込まれないために制度があります。

会社側にも事情があります。

介護する側にも事情があります。

そして何より、介護される親本人の生活があります。

だから必要なのは、誰か一人が我慢することではなく、

介護を家族だけで抱え込まず、会社だけにも背負わせず、制度とサービスを使って続けられる形を作ること

なのだと思います。

介護休業の93日は、そのために使う時間でもあります。

介護は、ある日突然始まることがあります。

そのとき「仕事を辞める」しか選択肢がない状態にしないためにも、まず制度を知っておく。

それが、仕事と介護、そして自分自身の生活を守る最初の一歩ではないでしょうか。


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