「東京の家賃が高くて、一人暮らしが苦しい」
障害年金や限られた収入で暮らしている人なら、家賃の負担はなおさら大きな問題になります。
では、もっと家賃の安い地方へ引っ越したらどうでしょう。
私は北海道函館市で暮らしています。
そこで今回は、かなり思い切って、
東京から函館へ引っ越したら、生活費はどのくらい変わるのか。
実際の家賃相場などを使って考えてみます。
ただし、最初に結論を書いておきます。
函館へ来れば誰でも生活が楽になる、という話ではありません。
家賃は大きく下げられる可能性があります。
一方で、東京にはない暖房費や冬の移動の問題があります。住む場所によっては車が必要になることもあります。
だから比較したいのは家賃ではありません。
「そこで生活するために、毎月いくら必要なのか」
です。
東京では、一人暮らしの家賃が10万円を超えてきた
まず現在の東京の家賃を見てみます。
LIFULL HOME’Sが2026年7月の賃貸市場を調査しています。
東京23区のワンルーム、1K、1DK、1LDKなどのシングル向け物件では、
掲載賃料 13万6,075円
でした。
ただし、高額な物件も含まれる掲載価格だけで考えるのは現実的ではありません。
そこで私が注目したのが、
実際に問い合わせが入った物件の平均賃料です。
こちらは、
10万457円。
東京23区では、実際に部屋を探している人が反応している単身向け住宅でも、平均10万円を超えています。しかも前年同月より4.2%上昇しています。
もちろん東京23区でも、地域や築年数などによってもっと安い物件はあります。
それでも、
「東京で一人暮らしをするには住宅費が重い」
という状況は数字にも表れています。
では、函館はいくらなのか
同じLIFULL HOME’Sで函館市の家賃相場を調べると、
| 間取り | 函館市の家賃相場 |
|---|---|
| ワンルーム | 3.90万円 |
| 1K | 5.10万円 |
| 1DK | 4.30万円 |
| 1LDK | 5.42万円 |
となっています。
こちらは駅徒歩10分以内の賃貸物件を基準に算出した相場で、管理費や駐車場代などは含まれていません。
東京と函館では集計方法が完全に同じではないので、「東京10万457円-函館3万9,000円=正確な差額」とすることはできません。
ただ、
住宅費の水準そのものにかなり大きな差がある
ことは分かります。
東京に住んでいる人にとっては、
「函館って、そんな家賃で部屋を探せるのか」
という感覚かもしれません。
家賃10万円と4万円では、年間72万円違う
ここからは分かりやすく、
東京 家賃10万円
函館 家賃4万円
として考えてみます。
差額は、
月6万円。
1年間では、
72万円。
5年間なら、
360万円。
これはかなり大きい。
障害年金を中心に暮らしている人なら、なおさらです。
2026年度の障害基礎年金2級は年額84万7,300円です。月額にすると約7万600円になります。
年間72万円の家賃差は、
障害基礎年金2級の年間受給額の約85%に相当します。
そう考えると、住む場所によって家計が大きく変わることが分かります。
月12万円で暮らす人ならどうなる?
もう少し具体的にしてみます。
障害基礎年金に給与や工賃などを加えて、
毎月12万円
の収入がある人を想定します。
東京・家賃10万円
収入 120,000円
家賃 ▲100,000円
残り 20,000円
ここから、
食費、電気、ガス、水道、通信費、日用品、医療費、交通費などを払うことになります。
これでは現実的にはかなり厳しい。
では函館ならどうでしょう。
函館・家賃4万円
収入 120,000円
家賃 ▲40,000円
残り 80,000円
家賃だけを比較すれば、
毎月6万円の余裕が生まれます。
ここまで見ると、
「だったら函館へ引っ越せばいいじゃないか」
となりそうです。
でも、話はここで終わりません。
東京では「車を持たない」が普通に選べる
東京の強さは、住宅費ではありません。
移動です。
東京都交通局の都営地下鉄なら、普通運賃はIC利用で178円から430円。
それ以外にもJR、東京メトロ、私鉄、バスなどがあります。
スーパー。
病院。
役所。
職場。
福祉事業所。
これらに公共交通でアクセスできる地域が非常に多い。
障害があって車を運転できなくても、
車を所有しない生活を組み立てやすい。
これは東京で暮らす大きなメリットです。
函館にも市電はある。でも東京とはまったく違う
函館にも公共交通があります。
代表的なのが函館市電です。
現在の大人運賃は、
2kmまで250円、4kmまで270円、7kmまで290円、7kmを超えると300円です。
例えば函館駅前から五稜郭公園前なら270円。
函館駅前から湯の川までは290円です。
さらにバスもあります。
ですから、
「函館=車がなければ絶対に生活できない」
というわけではありません。
ただし、東京と同じ感覚で物件を選ぶのは危険です。
ここがものすごく重要です。
函館で「家賃3万円」だけを見てはいけない
例えば函館で、
家賃3万円
の物件を見つけたとします。
東京から見ると、ものすごく安く感じるでしょう。
でも、
スーパーまで遠い。
病院まで遠い。
市電がない。
バスの本数が少ない。
冬は徒歩で移動するのが難しい。
結果として車が必要になった。
こうなれば話が変わります。
車を持てば、
ガソリン代。
任意保険。
自動車税。
車検。
タイヤ。
整備。
そして車両購入費。
が必要になります。
つまり、
家賃を7万円下げても、その7万円が全部残るわけではありません。
逆に「家賃4万円の市電沿線」が面白くなる
私はむしろ、こちらを考えたい。
函館で最安値の住宅を探すのではなく、
車を持たなくても生活できる場所を探す。
例えば、
市電の停留場が近い。
徒歩圏にスーパーがある。
ドラッグストアがある。
病院へ公共交通で行ける。
仕事や福祉サービスへ通える。
こういう場所です。
家賃3万円の郊外住宅と、
家賃4万円の便利な住宅。
物件情報だけ見れば3万円の方が安い。
でも3万円の住宅で車が必要になり、4万円の住宅なら車なしで暮らせるとしたら、
生活全体では4万円の住宅の方が安い可能性があります。
ここに地方移住の面白さと難しさがあります。
そして東京にはない「冬」がある
もう一つ、東京から函館へ移住するなら絶対に無視できないものがあります。
冬です。
函館は北海道です。
気象庁の平年値でも冬には積雪があり、1月上旬の平均気温はマイナス1.8℃、日最低気温の平均はマイナス5.2℃です。
当然、暖房が必要になります。
そして暖房費だけではありません。
雪が降る。
路面が凍る。
歩道が狭くなる。
雪山ができる。
身体に障害がある人なら、
夏には歩ける500mが、冬にも同じように歩けるとは限りません。
ここは作業療法士として、かなり気になるところです。
「徒歩10分」は東京と函館で同じではない
不動産広告には、
「スーパー徒歩10分」
「駅徒歩8分」
などと書かれています。
でも障害がある人の場合、
その数字をそのまま受け取ることはできません。
片麻痺がある。
車椅子を使っている。
長距離歩行が難しい。
疲れやすい。
さらに函館なら冬道があります。
同じ500mでも、
その人にとっての移動コストは違います。
そして移動できなければ、
タクシー。
宅配。
家族の送迎。
福祉サービス。
などが必要になります。
つまり、
住環境の問題が、そのまま家計の問題になる。
これはFPだけで家賃表を見ていても分かりません。
東京10万円、函館4万円。「6万円得」で終わらせない
ここまでを整理してみます。
| 比較するもの | 東京23区 | 函館 |
|---|---|---|
| 住宅費 | 高い | かなり下げられる可能性 |
| 公共交通 | 非常に充実 | 地域差が大きい |
| 車なし生活 | 組み立てやすい | 住む場所による |
| 暖房 | 比較的小さい | 冬は大きな支出になり得る |
| 雪・凍結 | 少ない | 移動に影響 |
| 生活圏 | 選択肢が多い | 場所選びが重要 |
だから、
東京から函館へ移住すると家賃は大幅に下げられる可能性がある。
これは確かです。
でも、
生活費が同じだけ下がるとは限らない。
これも同時に考える必要があります。
では、どういう人なら函館移住で家計を軽くできそうか
私は、
「家賃が安い人」ではなく「車を持たずに生活圏を作れる人」
が一つのポイントになると思っています。
例えば、
家賃4万円前後。
市電やバスを利用できる。
スーパーが徒歩圏。
病院へ公共交通で行ける。
仕事や日中活動にも通える。
こうした条件を満たす住宅を選べれば、
東京で家賃8万円、9万円、10万円を払い続ける生活とは、家計構造そのものが変わる可能性があります。
「収入を増やす」だけがお金の問題の解決ではない
FPとして家計相談を考えると、
収入を増やす。
支出を減らす。
保険を見直す。
制度を利用する。
といった話になりがちです。
もちろん、それも大切です。
でも、もう一つあります。
住む場所そのものを変える。
例えば毎月1万円節約するのは大変です。
それを1年間続けても12万円。
ところが家賃が6万円変われば、
年間72万円です。
住居費は家計の中でも非常に大きな固定費です。
だから、
「今の街でどう節約するか」だけではなく、「自分の収入なら、どこで暮らすのがいいのか」
まで考えてもいいと思います。
障害があるからこそ、移住は「物件」から探さない
ただし、障害のある人の地方移住なら、私は家賃検索から始めないと思います。
先に確認したいのは、
どうやって暮らすのか。
通院先はどこか。
買い物はどうするか。
どのくらい歩けるか。
公共交通を利用できるか。
仕事や日中活動をどうするか。
必要な福祉サービスはあるか。
冬に移動できるか。
これらを確認して、
生活できる地域を絞る。
それから住宅を探す。
この順番です。
安い住宅を見つけてから生活を合わせるのではありません。
生活を作れる場所の中から、払える住宅を探す。
私はこの方が失敗しにくいと思います。
東京から函館へ。本当に暮らせるのかは、もっと具体的に調べられる
今回調べてみて、
「東京より函館の方が家賃が安い」
だけなら、記事にするほどの話ではないと思いました。
面白いのはその先です。
例えば、
障害年金2級+月5万円の収入で函館に住めるのか。
車を運転できない人なら、函館のどこに住めばいいのか。
スーパー・病院・市電を全部徒歩圏に入れられる地域はあるのか。
東京から函館へ引っ越すには最初にいくら必要なのか。
冬に実際に歩けるのか。
ここまで調べれば、
単なる「地方は家賃が安い」という話ではなくなります。
そして私は函館で暮らしています。
ならば、これは実際に調べられる。
今後このブログでは、東京から函館へ住む場所を変えると、生活がどう変わるのかを、もっと具体的に検証してみたいと思っています。
住む場所まで含めて、お金を考える
障害年金が月約7万円。
働いて月5万円。
合計12万円。
その12万円をどう使うかだけではなく、
12万円で暮らせる場所を探す。
そんな考え方があってもいいと思います。
東京で暮らし続けたい人は、もちろん東京で暮らせばいい。
地方移住が全員の正解ではありません。
でも、
「今住んでいる地域で一生暮らさなければならない」わけでもありません。
収入を変える。
支出を変える。
そして、
住む場所を変える。
お金と住まいを一緒に考えると、これまで見えなかった選択肢が見えてくることがあります。
福祉・お金・住まいのご相談について
障害年金や給与・工賃など限られた収入の中で、一人暮らしや住み替えが可能なのか。
家賃だけではなく、通院、買い物、交通、福祉サービス、住宅内での生活まで含めて整理することが大切です。
私はFPとして家計を、作業療法士として生活を、宅建士として住まいを見ています。
一人暮らし、住み替え、親亡き後の住まい、地方移住など、**「福祉×お金×住まい」**についてのご相談、講演・研修のご依頼を受け付けています。
関連記事
障害年金だけで暮らせるのか|一人暮らし・グループホーム・実家暮らしで考える生活費
参考資料
東京の賃料については、LIFULL HOME’Sの2026年7月マーケットレポートを使用しました。東京23区のシングル向け掲載賃料13万6,075円に対し、問い合わせがあった物件の平均は10万457円です。
函館の家賃はLIFULL HOME’Sの家賃相場を参照し、ワンルーム3.90万円、1K5.10万円、1DK4.30万円となっています。集計方法が東京のマーケットレポートとは異なるため、単純な同条件比較ではない点には注意が必要です。
障害基礎年金2級は2026年度で年84万7,300円です。 函館市電の現在の普通運賃は250~300円です。
住み替えや移住を考えている方へ
この記事では東京と函館を例に生活費を比べましたが、実際の住み替えは家賃だけでは決められません。
収入や貯蓄、車の運転、通院、買い物、仕事、身体の状態。人によって「暮らせる場所」の条件はかなり違います。
福祉特化FPでは、障害・介護・老後などをきっかけに住み替えや地方移住を考えている方の相談を始めました。
「今の家賃を払い続けるのが不安」
「地方へ移れば生活費を抑えられるだろうか」
「障害があっても一人暮らしできる地域を探したい」
「東京から函館への移住を考えている」
「老後は車を使わずに暮らせる場所へ移りたい」
そんな段階からで構いません。
FPとしてお金を計算するだけではなく、作業療法士としての生活・身体の視点、福祉や住環境の視点も含めて、**「どこに住めば、その人の生活が成り立つのか」**を一緒に整理します。
相談した結果、今の場所に住み続ける方がよい、函館への移住は向いていない、という結論になることもあります。
現在はこの取り組みの試行段階のため、初回相談は無料です。オンラインでも対応しています。
▶ 障害・介護・老後の住み替え・移住相談はこちら
※現在、不動産の仲介業務は行っていません。物件の媒介・契約等を行うサービスではありません。


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